知らぬがGod
「ちょっと、翼くん!?さっきの態度は何なの!葛城先生に失礼でしょう?」
「フンッ。俺の勝手だろう」
おっさんと担任が補習のことで話しているのに、当の本人である俺は無言で席を立った。
確かに失礼な態度だったろう。
でもそうする以外、どうしようもなかった。
あのままだと二人の仲の良さに腹が立って、壊れてしまいそうだったから。
あまりにも醜い、このドロドロとした黒い気持ちを、誰にも知られたくないんだ。
この美しい俺には、そんなもの似合わないから。
「ねぇ、本当にどうしたの?」
心配そうにこちらを見つめてくる担任を見ると、いつも必死で抑えている独占欲が暴れだす。
「翼くんが思ってること、言ってくれなきゃわからないわよ?」
そんなこと言うな。
ならお前は責任がとれるのか?
すべてをぶつけても、お前は俺を受け入れてくれるのか?
無理に決まっている。
いくら俺がバカでも、担任の置かれている立場はわかっているつもりだ。
「翼くん!」
「……うるさいぞ、担任」
もうこれ以上、話を延ばすわけにはいかない。
「知らぬがGodと言うだろうが」
「Godじゃなくて仏でしょ!」
2008/01/05