叶わない夢もあるんだね
髪を切り、女装も止め、すっかり美少女から美青年へと変わった悟郎は、大学へ進学してからも悠里のもとを訪ねていた。
「だって、先生のこと大好きだからね!」
常々そう言ってはいたが、気づいていないわけではなかった。
悠里の心が自分に向いていないこと、彼女に向けられる二階堂の目が優しいことに。
「ありがとう。私も悟郎君が大好きよ」
笑顔で言う悠里の目に二階堂が映りだしたとき、もうこの恋は叶わないと知った。
彼女の隣を歩くことは、もう許されない。
「ボク、先生のこと本当に好きだよ。でも、もうダメなんだね」
悟郎はパゥをぎゅっと抱き締めた。
悟郎の悲しみが伝わったのか、パゥは彼の頬に擦り寄る。
小さな親友の行動がとても優しくて、目頭が熱くなった。
「ボクはずっと絵を描いていきたい。これだけは叶えてみせるよ。でも、もう一つの夢は叶いそうにないや」
貴女と生涯を共にすることが夢でした。
もう一生叶わない。
2007/12/21