ゆめうつつ



そこは、誰も、何もない場所だった。
自分以外何も見えない。
ただただ真っ白な世界。
悠里は不安になった。

(みんな、どこ……?)

どこを見ても誰もいない。
叫んでみても返事はない。
世界に置いてきぼりにされた気分になった。

(寂しい……)

目に熱いものがこみあげてくる。
自然と声が漏れた。

「……つばさ、くん!」

助けて。
何故翼の名前が出たかはわからない。
ただ、彼ならどうにかしてくれる。
そう感じた。

誰もいないということは、翼もいないのだとわかっているのに。


「翼君……」

「どうした、悠里」

隣から優しい声。
とたんに世界が色付いた。





目を開けると見覚えのある豪華な部屋。

(……バカサイユ?)

「やっと起きたか、担任」

隣から聞こえた偉そうな声。
振り向くと翼が同じソファに座っていた。

「教室にいないからここに来てみれば。まさか寝ているとはな」
「え、あれ、私、翼君を探しに……」
「ふん。それでそのままぐっすりか。この俺に補習をサボるなと言っておいて、いい身分だな」
「あ、う……」

返す言葉もない、と悠里はうなだれた。
翼は一度ため息をつき、悠里の頭を優しく撫でる。

「随分うなされていたようだが?」

恐い夢を見た。
どんな内容だったか忘れてしまったけれど。
ただこれだけは覚えている。

「翼君が助けてくれたから、大丈夫」

翼は首を傾げたが、わからないならそれでいい。
確かにあれは翼の声だった。



夢でも現つでも貴方は隣にいてくれる







2007/10/27
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