ささやかな愛の花



部屋いっぱいの紙屑に埋もれて、翼様はいそいそと手を動かしていました。
時には苛立たしげに、時には奇声をあげ、それでも投げ出すことは決してなさいません。
ここまで何かに集中してらっしゃる姿を見るのは、本当に久しぶりです。

「翼様をここまでお動かしになるとは、さすが南先生ですね」
「ふん。当たり前だ。この俺の担任なんだからな」

そう翼様は得意そうにおっしゃいました。
翼様に大切なものができたのだ、と私は嬉しくなり、同時に『大切』を理解した翼様を誇らしく感じました。

「できた!できたぞ永田!」

急に嬉しそうな声をあげた翼様の手には、少し不恰好な紙花。
お世辞にも美しいと言えないソレは、しかし何よりも気持ちが込められていると一目でわかりました。

「さすが翼様です。南先生もお喜びになるでしょう」

私がそう言うと、翼様は微かに頬を染め「当然だ」と笑いました。
私でも初めて見る表情をさせてしまう南先生に僅かな嫉妬をおぼえました。

あぁ、私は彼女のようになりたかったのでしょうか。



このささやかな愛の花を贈られる貴女を羨ましいと思うほどに







2007/09/28
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