きみだからやめられない
聖帝の小悪魔様は今日も絶好調。
朝から水鉄砲を見事に命中させ、新しく買った悠里のスーツをびしょ濡れにしてくれた。
そのうえ逃げ足も早いものだから、捕まえて説教することもできない。
学校ではなんだかんだ忙しいので、補習の時間までに清春を捕まえることなど不可能に近い。(清春の悪戯はその間にも積み重ねられている)
かといって補習の時間になると勉強させることで頭はいっぱいになって、一日の悪戯を叱っている暇はない。
そもそも叱っても効きはしないのだ。
悪戯をやめさせることを優先するか。
勉強させることを優先するか。
幾度となく迷ってきた。
最近では悠里以外に対する悪戯は少なくなったというが、まったくなくなったわけではないのだ。
だから今日こそは悪戯をやめさせようと意気込んでいたときだった。
「隙ありィ!」
「えっ!?」
そしてまた一つ洗濯物が増えた。
「もー!なんでこんなことばかりするの、清春君!いいかげんやめなさい!」
悠里が叫ぶ。
不意打ちをくらったとはいえ、事前に説教を決め込んでいたのでつい声を荒げてしまったのだろう。
しかし清春からニヤニヤとした笑みが消えることはない。
「ンじゃあ聞くけどよ。お前の大ッ事な生徒チャンたちに被害が及ぶのと、お前がそれ全部を一手に引き受けるのだったらどっち選ぶンだァ?」
究極の選択を迫られている気がした。
悪戯が全部まわってくるのは嫌だ。確かにものすごく嫌だけれど。
「そりゃ、私が全部引き受けるわよ!」
真直ぐ清春の目を見つめて悠里は答えた。
清春は満足そうに頷く。
「キシシッ!それでこそオレ様の見込んだ女だぜェ!お前が自分を選んでたら究極の悪戯をしてやろうと思ってたのになァ。残念残念ッ」
保身を選ばなくてよかったと悠里は心底思った。
もちろんそんなこと微塵も考えなかったけれど。
「ま、今まで通りブチャ中心に悪戯してやっからよォ。楽しみにしてなァ!」
「……どっちにしろ悪戯をやめる気はないのね……」
楽しそうに笑う清春を一瞥して、悠里は溜め息を吐いた。
「当ったり前だロォ!お前に悪戯する楽しみを覚えちまったからなァ。今更やめれるわけねーぜェ!」
そう、飽きさせない悠里が悪いのだ、と清春は笑った。
お前だから余計やめられねーんだぜ?
2007/08/23