うらおもて、どっちも。



よーく見てろヨ

そう言って清春はコインを弾く。
くるくると回って落ちてくるソレを素早く手の平と甲の間に隠した。

「さ、ど〜っちだ?」
「むむむ……表?」
「はい、ざんね〜ん」

先程から繰り返されているこのやりとり。
悩んで悔しがる悠里を、清春はしてやったりといった顔で見ていた。

「つかヨォ。さっきから裏ばっか出てンだから、ちったァ疑えっての!」

清春はコインの裏表を悠里に見せた。
しかしそれはどちらも同じ絵柄で。

「な、何よこのコイン!どっちも裏じゃない!」
「ケケケッ!清春様特製・裏裏コインだぜェ!」

相変わらず見事にひっかかってくれるなァ悠里。
独特の笑いを発しながら清春は言った。

「お前もこのコインと一緒だなァ」
「どういうこと?」
「裏表がナイってことォ。どっちをとっても単純チャ〜ン。可愛いねェ」

取っては投げ、取っては投げを繰り返しながら悠里をからかう清春。
それが悔しいのだろう。悠里は清春からコインを奪った。

「それを言うなら清春君だってそうだわ。裏も表も悪戯ばっかり!」
「最っ高の誉め言葉だなァ。キシシッ」

笑う清春を恨めしそうに見ながら、フと思い出した。

「あ、でも、清秋君のときは優しくておとなしかったわよね。あれが裏なのかしら」
「ヴァーカ!あれもオレ様の表だっつーの!」

どことなくイラついたような返事に悠里は首を傾げた。
もしかして清秋を演じた自分に妬いているのだろうか。
そう思うと悠里は自然と頬が弛んだ。

「なに笑ってンだよ」
「なんでもないわ」

それでも笑う悠里に軽く舌打ちをし、正面から抱き締めた。
きつく、きつく。

「まぁどっちにしても、だ。これだけは確かだぜ」
「なに?」



うらおもて、どっちでも、お前を愛してる。







2007/08/06
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -