どりぶる音に恋をした



ダン、ダンとコートに響く。
シュッと放ったボールは吸い込まれるようにしてリングを抜けた。
一際大きな歓声があがる。



「はぁ〜。バスケの天才清春様は健在ってか?」
「いや、前より断然greatになっているな」
「努力した天才に適う者はなし、か」

アメリカでのデビュー戦を控えた清春の応援に、翼、一、瞬がわざわざやってきた。
現在の清春のプレーを見て、口々に称賛をする。
いつもケンカしている瞬も、清春の才能は認めているのだろう。
そのことが悠里には嬉しく感じられた。

「変わったでしょう」

悠里は微笑んだ。
その微笑みは以前のものとは違い、愛する者を想ってこそできる表情だと、彼女の教え子たちは思う。

「担任の力だな」

翼はフッと笑顔をみせた。

「清春君の力よ。私は何もしてないわ」
「そんなことないぜ。あいつを変えたのは絶対先生だもんな」
「そうだな。先生がいなかったら、今でも仙道は昔のままだった」

一と瞬も笑って言った。
悠里は微かに頬を染め、「そうかしら」と呟いた。

「才能はあるんだ。先生が仙道に努力することを教えたから、今奴はこのアメリカという舞台にたっている」

瞬は今までむけることなど絶対になかった優しい視線で清春を見た。
悠里も翼、一もそれに気づき、互いに笑いあう。
何故三人が笑うのかわからない瞬は妙にドギマギした。

「な、なんだ?」
「いやぁ。清春のことを一番理解してんのは瞬かもな〜、てな」

一の言葉に瞬はすぐに赤くなり、「ふざけたことを言うな!」と怒鳴る。

「あら。それは違うわよ、一君」
「え?」

悠里の悪戯っぽい笑みに、一はキョトンとした顔になった。

「だって、」
「うぉーい。なァに騒いでンだァ、オマエら」

いつのまに休憩時間になったのか。
清春が後ろから悠里を抱き締めた。
悠里はその行為に照れながらも、清春の手を握ってこう言った。

「私が清春君の一番の理解者だもの」

ぽかんとする一同。
にっこりと笑う悠里。
最初に我に返ったのは清春だった。

「クッ、クククッ!なァに可愛いコト言っちゃってくれてンだよ、悠里」
「だって本当のことじゃない。清春君がどれだけバスケが好きか、どれだけ努力してるか、私が一番知ってるわ」
「フッ。担任も言うようになったな」
「あ〜、なんか久々に清春がむかついたぜ」
「同感だ」
「ヒャハハッ!テメエら悠里にちょっかい出すんじゃねェぞ〜」

ピーッと休憩終了の笛が鳴り、逆に騒がしいやりとりが休憩に入る。

「おっと。ンじゃ、オレ様はちょっくら行ってくンぜ」
「うん。がんばってね!」


そして再びコート内にボールの音が響く。
ワァッと歓声があがった。それはちょうど清春が相手をぬいて、味方にパスをおくった時。

「昔の清春君のプレーも素敵だったけど……」

孤高だと感じたあの時の彼。
でも今は違う。

「やっぱり今のほうが断然素敵だわ」

悠里が嬉しそうに言うと、三人も「そうだな」と同意した。



私は、

そのドリブルの音にまた恋をした。



胸を張って言う悠里の姿を、教え子たちは微笑ましそうに見ていた。







2007/07/24
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