大切なモノ
もう夜も更けに更け、普通ならば寝ているはずの時間帯。
だけれどどうしてもやっておきたい仕事があって、陸奥はまだ机に向かっていた。
「今日やらないといけないわけではないのでしょう?あまり無理しないでください」
可愛い顔で小言を口にしていた倫は、陸奥の隣で舟を漕いでいた。
「おい倫。もう布団入れよ」
倫の頭を撫で、優しく陸奥は言う。
しかし倫は目をごしごしと擦って、首を横に振った。
「陽之助さんが寝るまで、寝ません」
相変わらず頑固な彼女に苦笑し、陸奥は筆を置いた。
「しょうがねぇなー」
そう言って背筋を伸ばすと、席をたつ。
「今日はもう終わり!一緒に寝ようぜ、倫」
その言葉でホッとした顔を見せた倫を促し、陸奥は寝室へと向かった。
隣で穏やかな寝息をたてる倫を見つめ、ゆっくりと抱き締める。
夜遅くなっても一緒に起きて頑張ってくれる、陸奥の支えとなる存在。
彼女がいなければ、きっと自分はここまで頑張れなかったと思う。
もちろんもともと日本を変えたいと思っていたけれど、隣にいてくれる倫を幸せにしたいという思いが重なって、いっそう仕事に励めるようになった。
無理などしていない。
疲れなど、倫が側にいればすぐに吹き飛ぶ。
一番大切な彼女のためならば、
いくらでも頑張れるのだ。
2007/11/26