とあるいくつもの可能性



「お前は新選組に行くのか」

久しぶりに聞いた辰巳さんの真面目な―というより無感情に近い声音にドキリとした。

「そうっスね。俺は、相馬が決めた人が俺の付く人だって思ってますから」

希望願望とかじゃなくて、それが事実なのだと本気で思ってる。
周りから見たら、俺は相馬の腰巾着のように見えるかもしれない。(俺と相馬は対等だから、実際はもちろんそんなんじゃない)
けど、それでも別にかまわないんだ。
俺が相馬を親友だと思ってる、それだけで奴を信頼する理由は十分だ。

「ま、お前らは似てるからな。当たり前といやぁそうなんだろうよ」

驚いた。
性格がまったく違うのによく付き合ってられるものだ、とは香久夜楼の姐さんたちによく言われていたが、似てるだなんて初めてだ。
それが表情に出てたのか、辰巳さんは俺を見てフッと笑う。

「似てるよ、お前ら。性格とかじゃなくてよ、心がな」

性格と心、どう違うのか明確にはわからなかったけど、言っている意味はわかる気がした。
近いものを心に感じるからこそ俺は相馬に惹かれたワケだし、相馬もきっとそれを感じてくれている。
どこからくるかわからないけど、自信があった。
佐幕か討幕か。そんなこと俺たちにはさして重要ではなくて、自分の納得のいく人が現れさえすればどちらにだって付く。
それが今回はたまたま新選組だっただけのこと。
一度決めたら貫き通す覚悟だって持ち合わせている。

「野村」

再びドキリとした。
思考に耽っていたからだけじゃない。
辰巳さんの瞳が俺を一瞬で縛り付けたからだ。
あぁ、この人も俺たちと“似ている”。

「俺はおそらく陸奥に付く」
「……え?辰巳さん、陸奥のこと嫌ってたじゃないっスか」
「うるせぇ。心境の変化っつーのは誰にでもあんだろ」

まぁ、そうだけど。
それでも陸奥というのは驚きだ。意外にも程がある。

「まだ奴には伝えちゃいねぇがな。場合によっちゃあ、お前らと敵対することになるかもしれねぇ」

それは嫌だ。
知り合いだからという訳ではなく、辰巳さんの腕を考え、さらに陸奥に付くとなると、これはなかなか厄介で敵にまわしたくない組み合わせだ。
だが面白いとも思う。
彼らがどう動くかなんて想像もつかないけれど、だからこそ近くで見てみたいかもしれない。
まぁこんなこと思っても結局のところ俺は新選組に行くと決めてしまったあとなので、彼らの行く末を間近で見ることはないのだろう。

「惜しいことしたかなー」
「あん?」
「もうちょっと早く言ってくれたら、俺もそっちに付いたかもしれなかったのに」

結構本気で残念に思ってたんだけど、辰巳さんは皮肉染みた笑みで一蹴してくれた。

「勘弁してくれ。お守りなんざ陸奥だけで手一杯だ」

ひっでぇなぁ。







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第2回野村祭


2010/04/22
2010/08/08
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