きみをつる
「倫ちゃんはさ、相馬のことどう思ってる?」
急に真面目な顔をして言うもんだから、驚いた。
話の流れではおかしくない。
先程まで二人でお茶を片手に、肇さんの話をしていたところだ。
彼がいかに良い人かとか、実はこんな失敗もしていたとか、野村さんが熱心に語っていたのだ。
彼がどれだけ肇さんのことを好きなのか、それが少しも余さず伝わってくる。
だからか、急に私に話を振られたのはまったくの予想外だった。
「どう……とは、それは頼りになるし、良い人だなと思ってます」
「好き?」
「はい」
長らく寝食共にしていると情も沸くし、事実兄のような存在だとも思う。
嫌いなわけがない。
私が即答すると、野村さんは優しく微笑んだ。
「相馬はさ、淡白な所もあるけど、倫ちゃんや花柳館の皆のことがかなり好きなんだよ。すごく大切に思ってる」
肇さんがそう仰ったのですかと問うと、聞かなくてもわかるよと返ってきた。
「だから、さ。仕えるべき人を見つけても、ここを出るのは多少なりとも寂しいんだ。面には出さないけどね」
あくまでも肇さんが寂しがるという風に話しているけれど、それは野村さんも同じではないのだろうか。
肇さんは明日にでも新選組への入隊を決意するだろう。
そうしたらきっと野村さんも共に行くのだ。
このことは私も花柳館の皆も、なんとなくだけれど確信していた。
「会いに行っても、いいですか?」
おずおずと申し出ると、彼はニカッと笑う。
「もちろん!喜ぶよ、相馬」
それが心底嬉しそうで、私も嬉しくなった。
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野村は相馬→←倫と思ってるけど実は野村←倫だったというお話。
んでもって自分では気づいてないけど野村→倫で、好きな子に弱いところを見せたくなかったから相馬をエサにした無意識にちょっとズルい野村でした。
(説明してもわからないほど、それはもう微妙な)
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野村祭
2009/10/17
2010/08/08