卑怯だなんて言わせない
「お?お嬢ちゃん、今日も来てたのか」
「あ、永倉さん。こんにちは」
今日は鈴花さんに会いに来たんですと倫が言うと、「そうか」と笑いかけてくれる。
永倉の笑顔を見ると心が晴れるようで本当に落ち着く、と倫は感じていた。
「最近毎日来てるよなぁ。仕事熱心なんだか、ただの暇人なんだか」
からかうような口調の彼に倫は曖昧な笑みを返した。
実際こんなにマメにここを訪れる必要はないのだ。
とりたてて用事があるわけでもな。
それでも何か理由を付けてまで訪れるのは、
(あなたに会うためなんですよ)
永倉はきっとわかっていない。
いや、わかっていて知らないふりをしているのだろうか。
倫は永倉をじっと見つめた。
「ん?どした?」
「いえ、何も」
彼と同じ新選組というだけで、相馬や鈴花たちを利用している。
ただ永倉に会うためだけに、彼らに会いに来ているのだ。
卑怯だなんて言わないで
(だってこうでもしないと、この人に会う理由なんてないの)
2008/02/16