暮れなずむ夕陽に背を向け
街が橙色に染まる。
美しい景色だが、それはまるで、街全体が炎の海と化しているようにも見えて、倫は一瞬身震いをした。
感動よりも恐れが勝るとはいかほどのものかと倫は思ったが、その要因はあまりに身近にあることで。
「私たちは、このままこの夕陽のように沈むだけなのでしょうか」
負け戦が続き、新選組の立場は悪くなる一方。
このままでは新政府の影に沈み、目指していたものは志とともに砕かれる。
意気があるだけでは、もうどうにもならない所まできているのかもしれない。
「いや。局長副長がおられる限り、俺たちは沈まない。たとえ今沈んでいても、これからまた昇るんだ」
そう言い切った相馬の瞳は強い意志を湛えていて、倫はそんな彼を誇らしく思うと同時に、自分が恥ずかしくなった。
「すみません。弱気になったりして」
「いや、気にすることはない。君に頼ってもらえるのは俺としては嬉しいからな」
穏やかに相馬は笑い、倫の手をしっかりと握る。
「弱気になる必要はない。君には俺がついている」
そして二人は暮れなずむ夕陽に背を向けた。
2007/12/23