君に贈る花束



ふわっと広がる優しい香。
汗と熱気でいっぱいの道場に似合わないソレは、倫にとって、嗅ぎ慣れているような、慣れていないような匂いだった。

「やぁ、こんにちは」

溢れんばかりの花束から、聞き慣れた声がする。
倫は一瞬ぎょっとしたが、それが三樹の声だということにすぐ気づく。

「み、三樹さん!?どうしたんですか、その花」
「ああ、知人に貰ったんだ。でもこれは僕が持つより女性のほうが似合う。だから君に渡そうと思ってね」
「え、私に?おこうさんではなくて、ですか?」
「……………あぁ、君にだよ」

三樹は倫の言葉に一時固まり、しかしすぐに微笑んでみせた。
そんな彼の反応を倫は不審に思ったが、にこにこと花を差し出す三樹に、そんな思いはすぐに払拭された。
倫は花を受け取り、その香をいっぱいに吸い込んだ。
優しい香が鼻を擽る。

「ありがとうございます。三樹さん」

花のような倫の笑みに、三樹は顔を赤くした。



(花を見て一番に思い浮かんだのは、君の笑顔だったんだ)







2007/11/18
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