欲まみれに純愛


※血、グロ表現がほんの少しでてきます。
※野村が別人同然です。弱気な野村なんて見たくないという方はお戻りください。








戦いたくない
死にたくない
逃げ出したい

なんて無様な。
武士の風上にもおけない。

あぁ、でも……





鉄砲の音が鳴り響く。
これが鳴り止むことはない。
それだけではなく、もちろん男たちの悲鳴も。

「ひっ!」
「あ、こら、背中見せんなっ!」
「うわぁっっ!」

目の前で血を吹き出して倒れていく仲間たち。
倒れた後も僅かに動いていたが、再び銃弾を受け、さらに口から大量の血を吐き出して死んだ。
その場から動けなくなった的にも、奴等は容赦がない。
逃げ出そうとした罰だ、などとは決して思えない。
それよりも鉄砲の無慈悲さに腹がたった。

「くそっ!刀で勝負しろってんだ!」

遠くから撤退の命令が聞こえる。
背後を気にしながら、野村は走った。
その間に見た仲間隊士の死体は数知れない。



「野村さん!」
「倫ちゃん!よかった、大きな怪我ないみたいだね」
「はい、野村さんもご無事で何よりです」

屯所に戻ると倫が野村を出迎えた。
所々とかすり傷はあるようだが、目立ったものはない。
野村はホッと息を吐いた。

「新政府の鉄砲、最新式のものでしたね」
「あー、やっぱそうだったんだ?」
「はい。こちらも多くの隊士たちがやられてしまいました」

野村の着物の袖を捲って、倫は顔をしかめた。
血がべっとりとしたそこには、弾がかすったのか僅かに肉が抉られていた。
痛い、なんてものではないはずなのに、野村は笑顔を絶やさない。

「これくらいですんで、良かった方だよ」
「……そうですね」

熱くなる目頭を冷まし、倫は手当てを始めた。

「このまま技術が進んでったら、どうなっちゃうのかな」
「そうですね……戦が大規模になってしまうのは間違いないでしょう」
「そしたら……民間人にまで飛び火しちまうこともあるのかな」
「……………」
「俺たちは、そんなことを望んでるんじゃないはずなのに」
「ええ……」

それでも技術はどんどんと進化していくのだ。
きっと今では想像もつかないことになるのだろう。
それが良い方向にいけば良いが、悪い方にいけば……

「恐いな……」
「え?」
「今日も目の前で仲間が死んだ。これが繰り返しになってくると、やっぱ恐いさ。俺もアレにやられちゃうのかなって」
「野村さん……」
「時々思うんだ。ここから逃げ出して、戦うことから離れて、君と二人で平和に暮らせたらなって……欲ばかりが出てくるよ」

もちろんそんなことはしないけどね、と野村は苦笑する。
彼に相馬や新撰組を裏切るような真似はできるわけがない。
なにより、彼自身が武士であることを誇りに思っているのだ。
平和な暮らしなど、遠い世界。

「ならば、生き抜きましょう」

倫は治療を終え、包帯に包まれた腕にそっと触れた。

「生きたい、戦いたくない、平和に暮らしたい。そう思うのは人として当然です。でも貴方がそうすることはできないと言うのなら、この戦いを早く終わらせるしかありません。そして全てが終わったら、共に暮らしましょう」
「……そうだね。ねぇ倫ちゃん。もう一つ欲張っていいかな」

照れたように笑う野村は吹っ切れていて、倫もつられて笑う。
彼の欲のない欲など、いくらでも聞いてあげたいと思える。
そして野村の願いに、もとよりそのつもりだと、倫は笑って首を縦に振った。



「ずっと側にいてよ、愛してるからさ」



(なんか順番ごちゃごちゃになっちゃったな)
(でも野村さんらしいです)







2008/08/06
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