血の味をかみしめた



「野村さん!大丈夫ですか!?」

巡察の途中で斬り合いになり、野村の体中には血がべっとりとついていた。
たまたまその場に居合わせただけの倫は、手当てする道具を持っていない。
ただ手拭いで拭き取ることしかできない。

「あー、大丈夫大丈夫。ほとんど返り血だからさ」
「でも……」

確かに拭った所に傷はない。
それでも、いつ大怪我するかと思うと気が気でない。
暗くてよく見えなかったとはいえ、斬り合いをする野村を初めて見て、急に不安になった。

「あてっ!」

倫が野村の顔に手拭いをあてると、野村は顔をしかめた。

「怪我してるじゃないですか!」
「大丈夫だって。舐めときゃ治るよ」
「こんなとこ、どうやって舐めるんですか」
「あ……」

怪我したのは舌が届くところではない。
ありきたりなボケをしてしまった野村は苦笑した。
倫は呆れ、自らが患部をぺろっと舐めた。

「わっ!ちょ、えっ?倫ちゃん!?」
「おとなしくしてください」

慌てる野村をおさえつけ、倫はなおも舐め続ける。

「……ものすごく恥ずかしいんだけど」

そう言う野村は、これ以上ないほど顔を赤くしていた。
対して倫は拗ねたような顔をして。

「心配かけた罰です」

倫の口の中には野村の血の味が広がる。
決して美味しいものではないけれど。



愛しい貴方の血の味をかみしめた。







2008/01/18
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