日差しを受けて



今日はお日柄もよく。
こんな日には、自惚れかもしれないけど、きっと彼が誘いにきてくれる。



「ねぇ倫ちゃん!散歩しない?」
「あ、野村さん」

最近の彼はよくこうやって誘ってくれる。
もちろん嬉しいのだけど、私は緊張してしまって。

「今日もお暇なのですか」

言ってから後悔した。
厭味な女だと思われただろうか。
こんなとき、可愛げのない自分に嫌気がさす。
それでも彼はただ「そうなんだよー」とあっけらかんと笑う。
なんとも思っていないのか、それとも何も考えていないだけなのか。
それはわからないけれど、彼のこういうところは短所でもあり、長所でもあると思う。
そんな彼に私は惹かれている。



一緒に花柳館を出る。
このときが緊張の最高潮。
このままでは心臓がもたない。解決法はひとつ。

「あの、肇さんは?」

そう言うと彼はいつも「ああそっか。相馬も誘おう!」と言って三人で行動することになる。
自分から仕掛けたことだけど、肇さんに少し嫉妬してしまう。

とにかく今日もそうしてくれると思った。
でも彼は少し複雑そうな顔をして。

「倫ちゃんはさ、相馬のこと好きなワケ?」

思ってもみない言葉がふってきた。
私にそんなつもりは少しもなく、そう思われたことが悔しくて、そう思わせてしまったことが恥ずかしかった。

「ち、違います!」

必死に否定するものの、「いいんだいいんだ。嘘つかなくてもさ」と彼は遠い目をしている。
話を聞いてくれない人はこういうとき困る。
きっと彼のなかではもう、肇さんに恋する私という構図が完成しているのだろう。
それをどうしても壊したくて、壊さなければならなくて。

「聞いてください!私が好きなのは野村さんです!」

頭の中が真っ白になる。
一瞬自分が何を口走ったのかわからなかった。
彼を見てみると、目を見開き固まっている。
そんな様子を見ていると、いつしか冷静さを取り戻していた。

「あの、野村さん……?」

恐る恐る声をかける。
すると彼はハッとして私の肩を掴む。

「え、それホント!?」
「え?」
「俺のこと好きって、本当に!?」
「は、はい」

答えると、彼は目一杯嬉しそうな顔をして、「やった!ザマーミロ相馬!」とか叫んでいる。
私はなんだか混乱して、「あの……?」と声をかけると、彼はあっと落ち着きはにかんだ。

「俺も好きだよ、倫ちゃんのこと!」



ぽかぽかと暖かい日差しを受けて



私たちは二人で歩きだした。







2007/10/12
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