目は口ほどに



「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……なんだよ倫」
「なんだと思います?」

わからねぇから聞いてんだろ!と言いたいのをなんとか堪えて、陸奥は倫を見た。
しかしすぐに照れくさくなって目を逸らす。
倫はただ陸奥の目をじっと見ているだけ。
睨んでいるわけではなく、媚びているわけでもない(媚びる倫など想像だにできないが)
真顔で何も感じさせない表情をしている倫が何を考えているかなど、陸奥には到底わからなかった。

「だー!わかんねぇよ!言いたいことあんならはっきり言いやがれ!」

ついに声を荒げた陸奥に、倫はため息をついて頭を振った。
その態度はますます陸奥を苛立たせる。
一見険悪なその二人の雰囲気に割って入ったのは、風変わりで有名な男だった。

「はっはっは!陽之助もまだまだじゃのう」
「才谷さん?」
「おんしはもうちっと女心っちゅうもんを学ばんといかん」
「はい?」

いきなりよくわからない注意を受けた陸奥は顔をしかめる。
ただこちらを黙って見つめてきた倫の心などわかるはずがないというのに。
陸奥が何を考えているのかわかったのだろう、才谷は苦笑して倫に向かう。

「まぁ倫さんも倫さんじゃ。あげに無表情を通されても混乱するだけやき」

伝えたいことがあるならそれなりに表情に出さんといかんと才谷に頭を撫でられ、それもそうですねと倫は苦笑した。

「じゃあ今度は今回の反省点を直した上で再挑戦してみます」
「うむ。頑張りや!」
「ちょ、オレを置いて話を進めないでください!」

なにか妙な結託をしている才谷と倫にのけ者にされている気がして、陸奥は声を大にする。

「陽之助は倫さんの目を見ちょらん。やき、わからんのじゃ」
「目……ですか?」



目は口ほどにものを言う、と言うじゃろう?



目をよく見たら、倫さんから送られる好意に気づけるはずじゃ。







2008/03/23
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