「おかえりなさい」



土佐派の奴らとの繋がりがバレちまったのが五年前。
それからの生活といえば地獄のようだった。
入獄は覚悟していた。どれほど辛くても耐えれるつもりだった。

でも倫がいないってのが、こんなにもきついことだったなんて。
いつのまにか倫なしでは生きられない身体になっていたなんて。

以前のオレからは考えられねぇよな。



久しぶりの自由に歩ける道を踏みしめる。
最初はゆっくり、でもすぐに早足になって。

あぁ、オレ出獄したんだ。
あと少しだ。
獄中でも忘れることなどなかった倫の顔を、やっと本物を見ることができる。
きっと、泣きそうな笑顔を。

伊藤に勧められたヨーロッパ留学。倫もついてきてくれるだろう。
その可愛らしい泣き笑いで頷いてくれるはずだ。
駄目っつっても無理矢理連れてくぜ。
もう離れたくなんてないから。



あと少し。
もう目の前。
倫がオレを出迎えてくれるんだ。

「ただいまー!」

倫は目を真ん丸にして、ふにゃっと表情を崩す。
でも笑顔が滲み出て。

さぁ言ってくれよ、倫。
オレがずっと待っていた言葉。



「おかえりなさい」







2007/12/19
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