「いい勝負だったね」
「…」

戻れと呟き、モンスターボールの中にクロバットをしまう。フィールドに幾つも散らばる跡が、先程までの戦いの激しさを証明していた。負けた数は十を超えた辺りから数えないようにしているが、勝率なら考えるまでもなかった。
言い訳するわけじゃないが、バトル中のコトネは化け物だ。対戦したことのある誰よりも凛々しく、また威圧感のある姿は、例えるなら竜。腹の立つことに、普段はまるで子どもなチャンピオンは、バトルにおいては誰よりも天才なのだ。
真剣な顔つきで、一体ずつ仕留めていくコイツに今日も勝てないだろう、なんて、誰よりオレが一番分かっていた。

「自己評価は?」
「60点」
「うわっ、厳しい」

悪くないバトルだったとは思っている。途中までは作戦通りに行ったし、意表を突かれた攻撃にもなんとか対応できた。判断ミスもさほど多くはないはずだ。
けれど、オレは負けた。だからせめて評価くらいは厳しくないといけない。

「ソウルは本当強くなってるね。私も、もうそろそろ危ないかな」
「当たり前だ。勝ちにきてるんだから」

昔はバトル後のこんな言葉にいちいち突っかかっていたのだが、自覚が薄いだけのただの馬鹿な奴だと気づいてからは、それも少なくなっている。
考えたら分かりそうなものだが、この数年間その事実を認められなかったオレのように、コトネも知らないふりをしているのかもしれない。
しかし、感覚を頼りにバトルを行い、ロケット団を解散に追い込み、数々の神や伝説に愛されて、世間ではそんな存在を凡人だとは称さない。

「でも、負けてあげないから」
「……そんなのこっちから願い下げだ」

愛おしそうにモンスターボールを撫でるこの天才に、ただのトレーナーが叶うなんて思っているわけじゃないが。

「負けるためのバトルなんて御免、だよな?」

コイツがこんな安い台詞に煽られて、満面の笑みを浮かべるような馬鹿で良かった。
オレなんかをライバルと称するチャンピオンに勝ちたい一心で、オレはここにいるのだから。


end.




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