人生の内で必ず使うであろうある言葉を、私は熱に浮かされたように呟き続けていた。

「すごい。凄い……」

 まばゆいライトに盛り上がる観客の声。寒さに熱さに怖さに楽しさに。それらは全てブラウン管もスクリーンも飛び越えて、私の五感を刺激する。

 激しい技の応酬に心臓がどくどくと鳴り、うるさい。もっとちゃんと最後まで聞きたいんだから静かにしてよ。

 静まり返った会場の中、審判はゆっくりと勝者の――新チャンピオンの名を告げた。


「レッド、さん」

 私の道はその時決まった。


0.熱



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