title by hmr


はあー。白くなった息は雪景色の中へ消えていく。

私は今、旅をしていた。自分だけじゃなくチェレンもベルも。最近雪しか見ないよと言ったら、こっちは毎日雨でうんざりだよと返ってきた。ベルは逆に日照り続きの暑い地域にいるらしい。
どれも楽なんて言葉とは程遠い旅だけど、その分得られるものも大きい。ただそれが何なのか気づくまでに時間はかかるけれど。

「そろそろ行こうか」

ここのジムリーダーや名の知れたトレーナーとは一通りバトルしたし、イッシュでは見かけない新しい仲間もゲットした。
自転車にまたがり、周りの景色を眺めながらゆっくりとペダルを踏み込む。この分じゃ次の街まで遠いだろうなあ。走っている通行人に次々と抜かされていくのを横目に見ながら、まったりとしたスピードは依然として変わらなかった。

イッシュ地方にいた時はやりたいことがたくさんあった上に、プラズマ団にも振り回されっぱなしだったから。今はこの速度が楽しいのだった。
乾いた風に煽られるまま真っ直ぐな道を進んで行くと、街と街を繋ぐ赤い橋に差し掛る。そしてそこで異変が起きたのだった。
両足がペダルから離れ地についてしまう。固まってしまって体が動かず、声も出ない。どうやら私は頭の先から足の先まで操られてしまったらしい。なのに私の鼓動は意思に反して速く大きくなる。原因はもう分かっていた。

「はじめまして」

後ろから声がする。それが誰からの誰に向けられたもので、どういう意味か。私は知っていた。答えようと口を開くと、遅れて声がついて来る。

「は、はじめまして」
「貴女は?」
「……私はホワイト。ポケモントレーナーでイッシュ地方のチャンピオン」
「そう。ボクは」

新しい肩書きでの二度目の初対面。挨拶が済んだ後も私は振り向くことが出来ず、彼が動かないことことに安心する反面、一向に静まらない心臓を抱えて今までにない緊張を感じていた。二人の人間として初めての出会いは、私の何かを変えてしまうのだろう。振り向けばきっとあの目に捕われて私は。
あと一歩が踏み出せない私を急かすかのように、追い風はだんだん強くなっていくのだった。



end.


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初めて書いたN♀主文。だいぶ放置してました……。




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