(何故か誕生日ネタ)




「ねえ、今日私の誕生日なんだ」

いつも通りコトネの勝利で終わったバトルの直後。
きっとまたソウルは悔しそうな顔をしてるんだろうな。そんなことを考えながらコトネはバクフーンと向かいあったまま、赤毛の彼に話し掛ける。

「ちなみにヒビキ君もなんだけどね」
「……良かったのか?」

うん。コトネは頷く。
何を、とは言わなくても今の短い問い掛けがソウルの最大級の気遣いであることに、コトネはちゃんと気がついていた。

「ヒビキ君とは十二時きっかりにポケギアで話したし、プレゼントはもう郵送してあるから」

相棒の背を撫でると甘えた声が上がった。何度聞いてもそれはいいものでコトネの顔も綻ぶ。
旅に出るまでは誕生日は二人一緒に祝うのが当たり前だったのになあ。もう見慣れたセキエイの景色を見回した後、目を細めて懐かしい光景に思いを馳せた。もちろん、その間ソウルが難しい顔をしていたことをコトネが知る由もない。

「……コトネ」
「何?」

ソウルは鞄から何かを取り出すとコトネに向かって放り投げた。そしてその何かは放物線を描いて彼女の手によって受け止められる。

「ヒノアラシのマスコット……?」

値札がついたままの手の平サイズのマスコットを、コトネは不思議そうな顔で眺める。なかなか理解出来ない様子のコトネに痺れを切らしたのか、ソウルはぶっきらぼうに言った。

「いらねぇからやる」
「私に?」
「他に誰がいるんだよ」

マスコットとソウルを三回程見比べて笑みを浮かべたコトネに対して、ソウルは先程の行動を早くも後悔したように眉間にシワを寄せる。

「今日が誕生日だって言ったことあったっけ?」
「……さあな」
「私だからヒノアラシ選んでくれたの?」
「うるせぇ」
「ソウル、耳赤いよ」
「……もう黙れ」


end.





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