title by hmr
(コトネ攻めな雰囲気注意!)




「私ね、いつかは倒されたいんだ」

 この台詞を聞くのはもう何度目だろう、とふと思った。
 唇に孤を描いたコトネが「今は嫌だけどね」と必ずつけ加えるのにもとっくに気がついている。そしてその度に「オレが倒してやるよ」とこれまたお決まりの返事をしてやると、コトネは悪戯っ子のような笑みを浮かべるのだった。

 コトネにとってチャンピオンという肩書は、誰にも負けまいとした結果たどり着いたもので特に執着心があるわけではないらしい。ただ根っからのバトル馬鹿だから公式記録に黒星がついたことは一度もないわけだが。
 そんなコトネが負けることを望むのは、ただそれくらい強い相手と戦いたいという意味だろう。そして、オレはそんなコトネに一度も勝ったことがない。
 バトルをする度にオレはそのバトルスタイルを分析し、自分なりに対策を立てているつもりだ。しかし認めるのは悔しいが、コトネはいわゆる天才。そのことに気づいてからは、前よりいいバトルが出来ればとりあえずよしとしているが、やっぱり最終目標はコイツに勝つことだ。それはコトネが天才だろうがなんだろうが関係ない。

「ありがとう、ソウル。楽しみにしてる」

 そうお礼を述べるコイツは、テレビ越しでしか見ることが出来ないチャンピオンコトネの笑みを浮かべていた。何度も見ているはずなのに、実際に目の当たりにすると背筋が寒くなる。その小さな体のどこからと出ているのかと思うほどの大きな威圧感。

「……ああ。期待してろ」

 売り言葉に買い言葉。強気な台詞で返したが、残念ながらその未来は当分は訪れない予感がして、オレは頬に張り付いた髪を払いのけた。




end.




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