title by ひよこ屋
(関東組幼少期)



「ふざ……けんな、グリーン!」
「泣き虫のお前こそふざけんな、リーフ」

きっかけは些細なこと。どちらとも理由なんて覚えてないだろう。
公園中に響くきゃんきゃんとした声に呆れつつも慣れっこで、レッドは草むらで見つけたポケモンと遊んでいた。
リーフは既に涙で顔をぐちょぐちょにして、それでもなお突っ掛かっていく。今にも泣き出しそうなグリーンは唇を噛み締めて堪えている。
いつまでやってんだか、とため息をついてレッドは仕方なく立ち上がった。

「そろそろ……」
「グリーンなんか嫌いだ!」

レッドはまたため息をつき、リーフは自分の言葉に目を丸くさせる。水溜まりがちゃぽんちゃぽん。何度か音を立てて、そしてグリーンは目の前からいなくなった。

グリーンの涙を引き換えに喧嘩は止んだ。

「リーフ、言い過ぎ」
「……ごめん」
「俺に言われても」
「そう、だよな」

別の理由でまた溢れてきた涙を手の甲で拭って、それでも止まらないようでかなり乱暴に目を擦って、リーフは宣言した。

「あたし謝ってくる」

ベンチに置き忘れられたグリーンのリュックを背負う。真っ赤になった目のことなんて気にも止めず駆け出して行く。

「レッドー、サンキュー!」

お礼なら言えるくせに。
公園の入り口近くからの大声に小さく笑って、それからあることに気づいて名前を呼んだ時には、もうリーフの姿は見えなくなっていた。



「あのさ、グリーン」
「……何でいんだよ」

チャイム鳴らしたらグリーンの姉ちゃんが出てきて、で部屋にいるって言われて。上手く言えないながらに一生懸命説明すると、本当かは分からないがグリーンは分かった、とリーフの話を途中で遮る。

「用は?」
「グリーンのリュック届けに来た……、のもあるけど」

リーフはグリーンのリュックの肩紐をぎゅっと握りしめた。

「ごめんグリーン。あたしムカついてて嘘ついた。本当は違うのにさ、嫌いじゃないのに、さあ」

フローリングに水滴がぽたりと落ちる。
声もだんだん聞き取りにくいものに変わって、最終的にはしゃくりあげながら謝りの言葉を繰り返した。

「悪かった、から。だから嫌いじゃないって分かれよ、グリーン!」

何で命令してんだよ。
グリーンは心の中でツッコんだけれど、扉の向こうのリーフはそのことを知らない。一瞬、優越感に似た笑みが浮かんだことも。
言わなきゃ分からない。有名なセリフの意味をひしひしと感じながら、グリーンはゆっくりと口を開いた。

「……仕方ねーから、分かってやるよ」
「グリーン、本当か!」
「人ん家で騒ぐなよ。ってか勝手に入ってくんなよ!」

勢いよく扉を開け、リーフはリュックを手にしたままグリーンに飛びついた。痛てーよ馬鹿、と文句が上がるのもお構いなし。
めいいっぱい抱き着いて、泣き腫らした目のまま満面の笑みを浮かべるリーフに、グリーンも眉間にシワを寄せただけだった。

「バカ」

それを言ったのはリーフのリュックを届けにきて、現在一階でお茶しているレッドだと二人が知るのは、もう少し先のこと。






end.

―――――――――
昔に途中まで書いてたのを掘り起こしてみました。
グリーンも好きなんだぜ!がテーマ。




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -