「はい、上がり」
「レッドはやっぱり強えーな!」

誰があのポーカーフェイスに勝てるのかと内心呟きながら、手札に残ったトランプを放り投げると、睡魔が襲いかかってきた。

「やめだ、やめ。オレはもう寝るからな」
「まだ夜はこれからだろ?」
「リーフが言えんのか?」

散々はしゃいだ後は、起動停止したように眠りにつく癖に。あたしだってもう大人なんだ、という声をあしらいながら洗面所へと向かった。
久しぶりに幼馴染三人集まっての宅飲み会。といっても未成年三人なのでテーブルに並ぶのはどれも可愛らしいものになるのだが。発案と計画、実行全て行ったのは、当然のようにリーフだった。
小さなことから大規模なものまで。オレたち三人で行われたことは、大体がリーフ主導であることが多い。次点でオレで、レッドが先頭きって何かをするということはまずない。きっとオレたち三人は、リーフが居なければ滅多に集まることがないのだろうなと思う。でもそれは、互いの仲が悪いと言うわけじゃない。
歯を磨きながら、先程三人でいた部屋の扉が閉まる音を耳にする。きっとトイレか何かだろう。幼馴染たちが勝手知ったるでオレの家を動き回るのは、最早当たり前になっていた。といってもその幼馴染とは、厳密には間違っているのだが。本当は幼馴染なんて、もっとたくさん居たんだけどなと思いながら口を濯ぐ。
三人を何度も繋ぎ合わせる紅一点を筆頭に、オレたち三人はただの幼馴染では言い表せない思いを持っている。それを悔しいながらも自覚しているのが一人、当たり前のように享受しているのが一人、きっと無自覚なのが。

「部屋のベッド借りるけど」

歯ブラシを置くと同時に、突如背後から声が掛かり思わず肩を揺らす。

「あ、ああ。というかお前が?」
「いや。眠り姫」
「早っ!」

さっきオレを馬鹿にしていたのは何処のどいつだと聞きたくなるくらい。じゃあ運んでくるから、とさも当然のように言ってのけるコイツは、やはりリーフに甘い。そして無自覚。幼馴染なんてこんなもんでしょ、という答えには計算も打算も何一つない。

「手伝いいるか?」
「大丈夫」

階下から尋ねるも、いつも通り断られる。結果が分かっているのなら、このやり取りが必要ではないのだが、ついやってしまうのは何故だろうか。
もしものことがあったときに、一人で運べなくてどうするの。
以前返って来た、そんなぞっとする言葉が変わっていて欲しいのか。もしものときまで幼馴染と一緒にいて、それを背負っていく覚悟を当たり前のようにしていて、それが無自覚だという事実を受け入れたくないのか。

「……ばっかじゃねーの」

レッドのために、こんなに頭を使ってやるなんて下らない。

「何が」
「何でもねーよ。それより運ぶのは?」
「終わった、から。はい」

雑魚寝でいいでしょ。決定事項のように渡された毛布を受け取る。最初に聞こえた扉の音はこれを取りに行ったものかと合点がいき、素直に礼を述べる。

「オレはもう寝るけど。お前は」
「まだ起きてる」
「そうか」
「電気は消しておくよ」

そのやり取りをする頃には、毛布を被るどころか瞼はもうしっかりとついていた。最近は忙しかったし、今日ははしゃぎ過ぎたせいだ。何かを片付けるような音を耳にして、そんなもん明日でいいと呟いた声は届いているのか。
おやすみ。アイツの労わるような声が聞こえて。返事をする間もなくオレは、夢の世界へと飛び立った。


end.

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久しぶりすぎて、当サイトの三人ってこんな感じだったかちょっと不安です…。レッドさんは多分いつもより甘め。


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