道路に敷かれた白線の上を辿りながら、体制を立て直したソウルの言葉に答える。ああ、と納得したような声を上げた癖に、表情が浮かないものになっているのを本人は気がついているのだろうか。もっと欲張ってくれて構わないというのに。
本当に、そんなところが。
「で、お嫁さんにしたいのはソウルかな」
一緒にいて落ち着くのはヒビキ君だけど、会えないと寂しいのは誰か分かっているのだろうか。私が歩くのを止めると、足音が消えた。少し後ろには立ち止まったソウルの姿。
「置いていくよー?」
そんなことをするつもりはないけれど。動かないことに焦れ始めたとき、ようやく足を進め出したソウルは、擦れ違い様に囁いた。
「……お前ならいいけど」
私が意味を理解する頃には、逆に置いていかれそうになっていた。
「待って、待って!」
慌てて駆け出すと、転ぶなよと声が掛かる。振り向いたソウルの頬は、依然として夕焼け色に染まっていた。