09/22(02:14)

「失礼する。会長はいるか?」
「お前が来るなんて珍しいな」

この学園におけるトップは二人いる。
一人は当然この部屋の奥に座る会長。そしてもう一人が現在来客してきた風紀委員長。互いに監視しながら切磋琢磨するのが生徒会と風紀の間柄だ、という謎の伝統に今期のツートップも漏れることなく当てはまる。一応、生徒会会計を名乗らせてもらっているおれは。

「委員長、飲み物は何がいいかな? コーヒー、紅茶、ジャスミンティーとか大体は揃ってるよ!」

当然、浮かれていた。忘れ物を渡したらすぐ帰るつもりだからお構いなく、と委員長は苦笑いを浮かべるけど、それすらもおれには嬉しい。だって委員長は、デスクトップのくまさんにも勝るくらい可愛いから。

「忘れ物?」
「お前のものが僕の鞄に紛れていたぞ。これだからお前と買い物に出かけるのは嫌なんだ」
「あっそう。でも誰のおかげで変な男にナンパされずに済んでんだろうな?」
「……それはお互い様だ」

友人関係にあるとは言えないこの二人が共に出かけるのは、利害が一致してるからに他ならない。
人気投票で選ばれる役職持ちは、容姿の整った人が多い。その人気投票の結果はかっこいい、可愛いという二つの枠の総数で決定されている(ちなみにこの枠、裏では違う呼び方をされてるらしいんだけど庶務弟が教えてくれない)。会長はかっこいい票の多さで一位に、圧倒的な可愛さで同率一位になったのが風紀委員長だった。

「顔が嫌なら整形でもすれば?」
「あり得ない。五体満足で生まれた体にそんな理由でメスを入れるなんてな」

身長百六十センチという小柄な委員長は、よく通るボーイソプラノできっぱりと拒絶する。仕草も態度も口調も男性らしいのに、その姿は可愛らしい女の子にしか見えないから不思議だ。

「ああ、ところで」

用事は終わったからと立ち去ろうとした委員長が、ふと足を止めて振り返る。真剣な眼差しにおれと副会長と庶務二人が映った、ような気がした。

「何かあったら言ってくれ」

そこの木偶の坊よりは頼りになれるから、と続けて冗談を言ったときには、もういつも通りの可愛い姿だったけれど。
先ほどの風紀委員長には、おれたちがどんな風に見えていたのだろうか。



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