08/28(03:21)

「転校生の案内は副会長がいいと思うんだ。会長は相手が真面目君だったら嫌だろうし、書記は行くの面倒だろうし、兄さんは人見知りだし、会計はお茶汲みして欲しいし。ね!」
「俺結構行きてぇんだけど」
「おれだけ理由おかしくない?」

二度目まして。俺は双子庶務弟、つまりちょっぴりオタクの方です。今日はなんと、この学園を王道足らしめるのに必要不可欠な転校生君が初登校してくる日なんです。しかも学園長の甥っ子で、生徒会の誰かに案内して欲しいというお約束つき。ここまでお膳立てされてしまえば生徒会唯一のオタクの義務として、というか単純に俺が見たいだけだけど、ここはなんとしても副会長に行ってもらわねば!
そんな萌えたぎる心を胸に、なんとか副会長の了承を得て数時間後。

「ただいま戻りました。会長と書記はちゃんと仕事してましたか?」
「してるに決まってんだろ。なあ?」
「うん」
「ちょっと見せて下さい。そうですね。この分だと多少休憩していたようですが、まあいいでしょう。お疲れ様です」

会長はお前は教師かよと文句を言ったけど、俺が思うに全員分の普段の仕事のペースとその内容を把握して副会長は並の教師より優れてると思うんだけど、とか冷静になってる場合じゃなかった。

「副会長。転校生どうだった!?」
「おや、貴方は随分と彼のことが気になってるようですね」

そうですね。副会長はあの転校生を形容する言葉を選んでいるようだった。もしやこれは、転校生が愛想笑いを見透かしたせいで恋愛に発展するどころか高感度が急低下してしまうというあのパターンか。俺は身構えたが、次の副会長の一言で力が抜けた。

「特に普通の生徒でしたよ」
「……え?」
「風紀を乱すことは恐らくないでしょう。私たちにしてみれば有難い存在ですね」
「え、え。じゃあ何処か変わったところはなかった?」
「変わったところですか?ああ、容姿は少し妙と言えば妙でしたが、校則違反ではありませんでしたし。あとは声が少し大きいくらいでしたか」

がっくり。やっぱり現実はそう上手くいくものじゃないよなあと、俺は生徒会室を見渡した。他にも質問してみたけれど、転校生が王道らしいところと言えば声が大きいことと学園長の甥っ子ってところだけ。え、妙な容姿?あれは俺があらかじめ転校生君に接触して、お近づきの印にあげたものだから当然ノーカンなわけで。

「……顔もどちらかと言えばかっこいいめだったし、仕方ないか」
「そういえば。無理して笑わなくてもいいと言われましたね」
「っ、その話詳しく!」

脊髄反射の様に尋ねてしまったけど、結果は今までから分かる通りで。

「世間話の中で会長の話題になったときどうしても苛々してしまったのですが、顔に出すわけにはいかないでしょう?けれど彼は無理して笑わなくてといいと言ってくれまして」
「うん、それでそれで?」
「その後彼が面白い話をしてくれまして、僕が少し笑うと、その顔の方が素敵だと言われて」

ちょっと口説き文句っぽいけど、あれ普通にいい人なんじゃあ。

「だから言ったじゃないですか。普通の有難い存在ですと」

さて仕事に戻りましょうか、と言って副会長は席につく。期待外れだったけど、いい生徒という点では当たりか。
僕は携帯を取り出して、今日の報告を待ちわびてるであろう相手にメールを送ろうとすると、今度は副会長から話しかけてきた。

「ところで。彼の褒め言葉って女性にも、いえ、あの人にも効果的だと思いますか?」
「どうかな。でもやってみる価値はあるんじゃないかな?」

あの人とは副会長がアタックし続けてる女性で、実は会長のお姉さん。のらりくらりと躱されたり、会長に冷やかしを受けたりしながらも、めげない副会長はかなり本気だ。そして副会長からの恋愛相談を受けるのがいちばん多いのが俺なのは、生徒会唯一の彼女持ちが俺だからで。

「そのメール、恋人の方ですか?」
「そうだよ」
「……そう返せるのってやはり羨ましいですね」

普通王道学園の生徒会は両性愛者か同性愛者ばかりだって?聞こえないなあ、そんなの。

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