飼い主留三郎とペット文次郎


「留三郎最近帰るの早いよね?なに、恋人でも出来たの?」

不運と名高い善法寺伊作は大学の講義が終わった後、すぐさま帰り支度をしている友人、食満留三郎に最近気になっていたことを尋ねてみた。
恋人云々は勿論冗談のつもりだったのだが、予想外の答えが返ってきた。

「おう。」

「えっ!冗談のつもりだったのに…!ウソ、お前なんかと付き合うなんて…どんな子?」

大分失礼なことを言われているが留三郎は気にもかけずデレデレとした表情で答える。

「すっげえ可愛い。目はくりくりで、毛はふわふわ、あのちっちゃさたまんねぇよ…もう食っちまいたい…」

「気持ち悪い。でも相当可愛い子みたいだね。僕も会ってみたいなあ。」

「ならこの後うちに来るか?会わせてやるよ。」

「うん。この後は何も予定はないし、お邪魔させてもらうね。」

帰り支度を済ませ、2人で留三郎の自宅へ向かう。
ちなみに彼は一人暮らしである。




「確かに目はくりくりしてるし、毛もふわふわだしちっちゃいよ。でもさ、これ「これじゃない、文次郎だ!」文次郎ハムスターじゃん。しかもオス。」

そう、留三郎が言う恋人とはハムスターであった。
目の下の毛が黒く、人間で言う隈のようになってはいたが、くりくりとした目が印象的な、可愛らしいハムスターだ。

「そう、俺がペットショップの前を通りかかった時に、コイツが滑車を壊す勢いで回してた…その姿に俺は惚れた…運命を感じたんだ…!そしてすぐ買って帰った。」

「チープな運命だね。」

「今ではもはや夫婦と言っても過言じゃねぇ。な、文次郎。」
「ぢ。」

「めっちゃ噛まれてるけど。」

「これは照れ隠しなんだよ!文次郎も俺のこと大好きなんだよ!ツンデレってやつだ!」

そのまま文次郎にちゅーとか言いながらキスをしようとして、唇に歯をたてられている留三郎を見て、伊作は彼と友人関係を続けるかどうか本気で悩んだ。

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けっまちわる…
いや、なんでこうなった。
ただ私はハムスター文次郎可愛いって…それだけだったのに…


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