無塩バター様へお誕生日プレゼント



何かしらの音を捉えているのか時折ぴくりと動く耳、ゆらりゆらりと動く尾はまごうことなき獣、猫のそれであることに間違いはない。
だがしかし、それではこの空間に存在しているのは猫かと問われればその答えは否なのである。
猫の耳、尾、そして手足を携え厳しい顔つきで部屋に鎮座しているのは会計委員会委員長、忍術学園一ギンギンに忍者している男、潮江文次郎その人であった。

文次郎がこのような姿になるまでに紆余曲折あったものの、端的に言ってしまえば原因は保健委員会委員長善法寺伊作お手製の正体不明の薬なのであった。
さて、文次郎は元より猫耳などといった愛らしいものが似合うとは言えない容姿の持ち主、この可愛らしいものが生えてしまったためにそれはもう盛大にからかわれた。
同じ組の仙蔵を筆頭に小平太(長次はただ生暖かい目をして文次郎を見ていた)、果ては原因とも言える伊作までもが腹を抱えひいひいと笑い転げたのだった。
文次郎が馬鹿たれと一喝し、さっさと元に戻さぬかと抗議しようと立ち上がったその時に、今の今まで委員会の仕事で部屋にいなかった恋人の食満留三郎が戻ってきてしまった。
留三郎は文次郎のその姿を目に留めた瞬間目を切れ長の鋭い目をこれでもかと言うほどに見開き、言葉もない様子。
そんな留三郎の反応に完全にへそを曲げてしまった文次郎は今、偶然見つけた空き部屋に閉じこもっているのであった。


「別に…俺にこんなものが似合わないのは自分でも十分理解している。だがあんな反応しなくたっていいじゃねえか…。可愛いだとか、そういった言葉が欲しいわけじゃないが、無反応というのは仮に恋人としてどうなんだ…」

ぶつぶつと留三郎に対する文句を並べ立てる文次郎は気配を消して後ろに立っている存在に気付いてはいない。

「気持ち悪いとか、思われてんのかなあ…」
「ばっかお前そんなわけないだろうが。」

返ってくるはずのない否定の言葉に勢いよく振り返った文次郎の目の前には、少しばかり不機嫌そうな留三郎が仁王立ちしていた。

「な…お前、どこから聞いて…」
「別に…からだが。」
「最初からじゃねえか!!聞いてんなよ声かけろ!!」

尾の毛を逆立て叫ぶ文次郎をまあまあと宥めそんなことより、と続ける。

「お前、俺が気持ち悪いなんて思ったとか…そんな下らねえこと考えてたのか?」
「下らねえってなんだよ!!お前、あの時無反応だったじゃねえか!どうせ気持ち悪いって思ってんだろ、笑いたきゃ笑え馬鹿たれ!」
「馬鹿たれはお前だ可愛いって思ってんに決まってんだろ!!」

は、と目を丸くする文次郎だったが見る見るうちに顔が朱に染まっていく。

「俺以外にそんな可愛い姿見せてんじゃねえよちくしょう!!」
「お前…目腐ってんじゃねえの…」

顔を背け憎まれ口を叩く文次郎だかゆらりと動く尾が嬉しさを隠しきれていない。
そこを指摘すればまたムキになるだろうとさっきの台詞は受け流し、パタパタと動く耳に触れ、髪を梳きながらもう一度告げる。

「可愛い、文次郎。」
「もう黙ってろ、ばかたれ…」

そう小さく呟いた文次郎はぽすりと留三郎に体を預け、目を閉じた。



しばらくして、元に戻るための薬が完成したと文次郎を探しに来た伊作が見たものは、留三郎の胴に尾を巻き付け寄り添って寝ている2人の姿だった。



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バタちゃんリクエストの猫耳文次郎でいちゃもんでした。
バタちゃんにはいつもお世話になっているから…ささやかながらこれでお返しが出来てたら嬉しいですね。


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