Mistake 2/3


「御釼さん」

翌日、以前私を呼び出したクラスメイトが再び声をかけてきた。

「何?」
「ちょお面貸しぃや」

こちらの意思を述べる間もないまま強引に腕を引かれ、体育館倉庫裏へと導かれた。



「!」

目的地に辿り着くなり、倉庫の壁に向かって思いっきり突き飛ばされる。
コンクリートに背中を強く打ち付けて、一瞬息が詰まった。

「呼び出された理由、わかっとるやろ?」

綺麗に飾った外見からは想像できないくらい低い声で、私を突き飛ばした張本人であるクラスメイトが言った。

「あんた、いつまで白石君と一緒におるつもりなん?」

こちらは例のリーダー格の巻き毛の先輩。
彼女の周りに集まった人数はざっと30人くらい。
この間の時よりも数を増している。

「それは、白石君に聞いてくださいって言いましたよね」
「はっ、またおんなじこと言う。ウチらは白石君に聞いた上で言うてんねや」
「?」
「あんた、えっらい嘘吐きやなぁ」
「こないだ白石君と友達とか偉そうなこと言うとったけど、ほんまはあんたが纏わりついてるだけなんやろ」

……だから、何故そうなる。

私は一応彼を避ける努力をした。けれど、向こうが全てそれを無にしてしまっているのだ。
よく見ていれば彼の方が纏わりついているのだということもすぐにわかりそうなものなのに。

「まだそれ言うん?」

内心で呟いていただけのつもりだが、嘆息と共に声になっていたらしい。
私の言葉を聞きとがめた女子のひとりが、眉を吊り上げた。

「いつまでもそないに図々しいこと言うてんやったら、ちょお痛い目見て貰わんとあかんなぁ」

みんなもそう思うやろ?

彼女の問いかけに場の雰囲気が一気に不穏なものになる。

不味い。

身の危険を感じた時には既に遅し。
両サイドを固めていた女子に片方ずつ腕を羽交い絞めにされ、逃げるタイミングをのがしてしまった。

「あたしらは白石君にちゃんと聞いてん。あんたと友達なんかって」
「あんたはそう思うとるみたいやけど、どうやら白石君は違ったみたいやで?」

徐々に私を取り囲む集団との距離が狭まる。

「友達でもないんに友達面されるとか白石君もええ迷惑やろうなぁ」
「ウチら、白石君の迷惑になるやつを排除するんが仕事やねん」
「あんたが白石君から離れん言うんやったら、その顔キズ物にしたるで?」

ファンクラブが言い募る言葉の意味がわからない。
友達じゃないって白石君本人が本当に言ったのだろうか。

彼女たちが言うところの意味を図りかねて何度も反芻していると、無言の間を拒否だと受け取ったらしく、リーダー格の女子が懐から物騒なものを取り出した。

「言っとくけど、ウチら本気やから」

手加減なんぞせえへんで、と彼女は手にしたカッターの刃を伸ばす。
殴られるくらいの覚悟はしていたが、まさか凶器を取り出すとは。
流石の私も息を呑む。

「白石君から離れへんあんたが悪いんや!」

相手が腕を振り上げると同時に反射的に固く目を閉じて顔を背ける。
灼けつくような痛みを恐れて、体を強張らせた。




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