If you cry 2/2


「お、見てみぃ白石」

昼から中ずっと苛々が収まらんまま授業後。
今日は新聞部のアンケート結果の集計作業があるからと、活動日でもないのに遠矢部長に招集された。
その作業中に、遠矢部長が声をあげ手招きする。

「なんですか?」
「高等部女子人気ランキングなんやけどな」

遠矢部長が指差すパソコン画面には、

『10位 御釼桜架』

という文字の羅列。
思わず舌打ちをしたなった。

「お前と関わって変わったもんなぁ、御釼桜架」

なんちゅうか、角がとれた?丸なった?そんな感じ。

部長の滔々とした評をきいていると、尚更苛立ちが増す。
これ以上この話題を聞いていると、俺の本性が露わになりそうやったから、遠矢部長ひとり残して、新聞部の部室を後にした。



***


彼女がこの数十日で見せた変化の大半は、俺の予想通りで俺が満足し得るものやった。
せやけど唯一気に入らへんことがある。

それは、彼女が俺以外の人間にも笑顔をみせるようになったことやった。
無表情で冷徹な『雪の女王』が時折みせる柔らかな表情。
そのギャップに嵌まったらしい男たちが積極的に彼女に話しかけるようになった。

「あぁ、ほんま苛々するわ」

こういう感情を嫉妬というんやろうか。

今までにも付き合うた女はおった。
暇潰しに手ごろそうで、それなりに容姿や性格もええ女たち。
けど、俺をこんなにも苛立たせたやつはおらんかった。
そもそも、これまでの女たちは向こうから付き合ってくれ、言われて付き合うただけのやつらやったから、当然といえば当然かもしらんけど。

「なんや、俺が惚れとるみたいで腹立つわ」

追いかける側なんて性に合わん。
恋愛は追いかけてくる相手を弄ぶのが楽しいというのに。

低く呟きながら下駄箱を開けると、中から1枚の封筒が落ちた。
女が好きそうな柔らかい暖色系の色合いをしたそれを拾い上げる。

まぁ中は見んでも大体の用件は想像がつくけどな。
いつもやったら封も切らずにそこら辺のゴミ箱に捨てるんやけど、今日は珍しく開けてみようっちゅう気分になった。

封筒と同色の便箋に書かれた内容は予想通りのもんやった。

「明日の帰り、大銀杏の下で待ってます……なぁ」

匿名での呼び出し。
大銀杏とは、正門から校舎へ向かう道の外れにあって、太い幹や広がる枝が人目を遮るせいか校内でも有数の告白スポットになっとる場所。

「……えぇ事思いついたわ」

手早く幾つかの思考回路を働かせ、得られた結論に口の端を歪める。
夕陽が反射する昇降口のガラス窓に、酷薄な笑みを浮かべた俺の顔が映っていた。

「逃がしはせんで?御釼先輩」

どんな手を使うても、俺はお前を手に入れる。



例えキミが泣いたとしても



(俺を本気にさせたお前が悪いんや)



-13-


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