Queen of the Snow 2/2


「ありがとうございました」

彼を矢道に入れるついでに安土に刺さっていた矢を集め、その手入れをしていると、数個のボールを手にした彼が頭を下げた。

「毎度毎度、迷惑かけてすんません」
「そう思うなら、こっちにボール飛ばさないようにしてくれる?
 ……ってまぁ貴方に言っても仕方ないんでしょうけど」
「『白石蔵ノ介』」
「は?」

噛み合わない会話に眉根を寄せる。
私は迷惑だと告げたのに、何故そこで忠臣蔵に出てきそうな人物名があがるのか。

「俺の名前です。貴方って言い方何や他人行儀すぎますわ」

不信感が露骨に表情に表れていたのだろう、彼が苦笑しながら説明した。
けれど他人行儀の何が悪いのか。
私と貴方は紛れもない他人だというのに。

「名前教えたんで、今度から名前で呼んでください」

私の疑問を意に介した様子もなく、彼は人懐っこい笑みを浮かべる。

「…………気が向いたらね」

そんな彼を半眼で見返しながら、早くここから立ち去ってほしくて適当な返事をすれば、

「ほな、また。御釼先輩」

彼は私の答えに満足したのか嫌な挨拶を残して弓道場を後にした。



***



「気が向いたらね……な」

弓道場から取ってきたボールを片手で弄びながら、先ほどの御釼桜架の台詞を反芻する。

まぁ、今はそれでええわ。
すぐに、自分から俺の名前呼びたくなるようにしたるから。



冷たい雪の女王様



(強気でいられるんも今のうちやで?)



-9-


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