Trick×Treat
夕方。
部活を終えて帰宅すると。
「Trick or Treat?」
風邪で部活を欠席したハズの彼女が自室(しかもベッドの上)にいた。
「…………」
――パタン
数秒の間固まって、無言で扉を閉める俺。
やって信じられへん。
普段めっっちゃ物静かで大人しいなまえが、チューブトップにショートパンツっちゅう露出高いカッコしとる上に、ネコミミと尻尾を装備しとるやなんて。
……これは、夢や。
今日1日なまえに会えんかったから、恋しすぎて幻覚を見たんや。
そう自分に言い聞かせて、再び扉を開くも。
「謙也君、お帰りなさいにゃ」
「!?」
彼女の姿はまだあって、更に猫のポーズで上目遣いにこっちを見てくる。
アカン。
悩殺モンやろ、コレ。
「……謙也君?どうかした……にゃ?」
無言のままの俺を不審に思ったんか、ベッドの上からおりて、俺んトコまでやってくる。
「なまえ……」
「はい……じゃなくて、にゃ?」
「とりあえず服着や」
胸が見えそうで見えない微妙なアングルに、外れそうになる理性をなんとか押し止めて、彼女に着替えを勧める。
「はーい。でもその前に。Trick or Treat?」
大人しく言うこときいてくれるやろう、と思うてた俺の予想を裏切って、なまえはにっこり笑って両手を出す。
「ほな、Treatで……?」
そないなカッコでイタズラされたら、色々マズイ気がしたから、飴ちゃんでもあげようかと、制服のポケットを探るが。
……しまった!
さっき部活でレギュラー全員に根こそぎ奪われたんや!
「……やなくて、Trickで」
仕方なく、イタズラをお願いすると、予想外やったんか、なまえは真っ赤になって。
「…………目、閉じて」
言われるままにすれば、すぐさま頬に柔らかいモノが触れて離れる。
「!」
驚いて目を開けると、今にも顔から湯気がでそうなほど頬を染めたなまえの姿があり、何やらこっちまで気恥ずかしくなった。
Trick×Treat翌日
(謙也ー)
(謙也くぅーん)
(おー、白石に小春)
(昨日はどうやったん?)
(何が?)
(ヤダ、なまえちゃんよ。可愛かったやろ?)
(まさかっ!白石っ自分らっ!)
(せや。みょうじさんに、昨日は部活来んでええから、あのカッコで謙也んち行けっちゅう指令を出したんや)
(ついでに語尾に「にゃ」を忘れずに、言うたんはアタシよ)
((や、やられた……!))
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