Bitter Bitter×Sweet


カタカタカタカタ。
秋も深まり、すっかり暗くなった夕方。
日が暮れるのが早くなったおかげで、部活時間も短くなり、多忙なテニス部に所属する彼氏と過ごす時間が増えたわけだけど。
当の彼氏である財前光は、私を自宅へ招いておきながら、ずっとパソコンを弄っている。

「ねー、光ー」
「……」

そんな彼氏の背中に向かって声をかけるも、返されるのは無言だけ。

「ねぇってばぁ」
「……」
「ひーかーるー」
「……なんや」

3度めにしてやっとこちらを振り返ってくれる。
但し、めっちゃ面倒臭そうな顔してだけど。

「とりっく おあ とりーと」

鞄から、友達と出掛けた時にノリで買ったネコミミカチューシャ(黒)を取り出して首を傾げてみせると、光の半眼にねめつけられた。

「……きっしょ」
「ひどっ!」

わざとらしく少し間を開けて言い放つあたりがタチ悪い。

「ついでに発音サイアク」
「仕方ないでしょー。英語苦手なんだもん」
「なまえの場合は英語だけやないやろ」
「まぁねー、って、それフォローになってないっ!」
「当たり前やん。フォローする気あれへんもん」
「うぅー……」

しれっと酷いことを言ってのける光の所業に、普段から光の暴言を聞き慣れてる私も、流石に涙目になってくる。

「……はぁ」

呆れたのか、怒ってるのかわからない溜息をついて、光はおもむろに席を立った。
そして、机の引き出しを少し漁ると。私の目の前に戻ってきた。

「ほれ。手出し」
「?」

言われるままに手を出すと、その上にぽとりと何かを落とした。

「……飴?」
「それやるから、この作業が終わるまで大人ししとき。終わったら、相手したるから」
「っ!」

光はくしゃりと私の頭を撫でて、パソコンデスクの前に座り直す。
これは、光が悪いと思った時にする仕草。

「できるだけ早くしてね」
「……」

無言を肯定の証と受け取って、私も再び雑誌を手にとる。

早く光の作業が終わることを期待しながら。



Bitter Bitter×Sweet




(なまえ、終わったで……って、寝とるし)
(すー……)
(なまえ、起きや)
(んー……、ひかる……?)
(せや。早よ起き)
(えへへ……)
(何?)
(大好き……)
(!?)
(すぅー……)
(……俺の気も知らんとこのアホ……)


((柄にもなくドキドキしとったんを隠してたなんて絶対に言えへんわ……))





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