Trick×Trick


「「トリックオアトリート!!」」

10月末日。
お菓子メーカーの陰謀か、はたまたかぼちゃ農家の策略か、最近になって日本にも定着しはじめたハロウィン。
特にちびっ子達への浸透率はめちゃくちゃ高く、ウチの近所でも区主催で小学生以下の子供を対象に仮装行列をするようになった。

そのため我が家にも魔女やら吸血鬼やら、下手をするとアニメのヒロインとかに仮装したちびっ子達が、お菓子をせびりにやってきた。

「はいはい、好きなの持ってきなー」

キャンディの入った籠を差し出すと一斉に群がり、すぐに蟻の子を散らすみたいに去って行く。

「まるで嵐の後みたいだ……」
「せやなぁ」
「!?」

独り言に返事があったのに驚いて顔をあげると、玄関に幼なじみの蔵ノ介の姿があった。

「何でいるの!?」
「何でて、チビ達の引率。なまえが俺に全く気づいてくれへんから淋しかったわぁ」
「あーはいはい。てゆか無駄口叩いてないで引率戻れ」
「俺の役目はなまえんちまでやから問題あれへん」

ぐっと親指を立てる蔵ノ介に頭を抱えたくなった。

「で、何の用?」
「Trick or Treat」

ちびっ子とは比べものにならないくらい流暢な発音と、爽やかすぎて逆に胡散臭い笑みを浮かべる蔵ノ介。

「……あげないよ?仮装してないんだから」
「ちゃんとしとるで?」

ほれ、と包帯をした腕を見せてくるが。

「別にいつも通りでしょ」

ゴンタクレな後輩に言うこときかせるために、毒手だのと中二病じみたことを吐かして毎日巻いてるんだから。

「いつもとはちゃうで?今日は両腕やもん」
「いや、やもんて言われても」
「最初は全身に包帯だけ巻いて来ようかと思うたんやけどな、」
「そんなことしたら即110番するわっ!」
「やろ?せやからこれが妥協点なんや」

思わずツッコミを返すと、蔵ノ介は怪しげな笑みを深める。

「ちゅうわけでなまえ。Trick or Treat?」
「う゛……」

対する私は言葉に詰まるしかない。
何故なら先程のちびっ子達に、手元にあったお菓子を全て奪われてしまったから。

「なまえさーん?お菓子をくれんとイタズラするで?」

自らの勝利を確信したように、口元をにやりと歪める蔵ノ介。

めちゃくちゃムカつくし、悔しいけど、私には降参するしか手がない。

まな板の上の鯉よろしく、そろそろと両腕をあげると。

「ほな、イタズラ決定な」

蔵ノ介の弾んだ声と同時に、ふわりと足が宙に浮く。

「ちょ、何してんのっ!」
「見てわからん?お姫様抱っこやん」

にこにこと笑いながら、蔵ノ介は玄関を開ける。

「て、どこ行く気!?」
「ん?俺んち。そのほうがじっくりイタズラできるし」
「っ!ヤダっ、ちょ、降ろしてっ」

ここまできて漸くアブないイミのイタズラだと言うことに気づくも。

「お菓子くれんかったなまえに拒否権はありませんー。それにええやろ?」



恋人同士なんやから。



艶っぽく耳元で囁く声に、不覚にも身体中が熱くなってしまった。



Trick×Trick




その後。
(……蔵ノ介のバカ、えっち、変態。子供のイベント使ってこういうことするなんてサイテー)
(えー?引率かて最初から行程の半分までやったし、ハロウィンは別に子供だけの行事やないやん)
(でもズルい。私、嫌って言えない)
(なまえは俺とこういうことするの、ホンマのホンマに嫌?)
(う゛……、そこまで、では、ない、けど……。まだ慣れないから……)
(やったら、こういうイベントん時にちょっとずつ慣れてって、な?)
(うん……(て、何か蔵ノ介の都合のいいように誘導されてる!?))





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