巨大なスクリーンに映るのは、映画のエンドロール。

ぱらぱらと席を立つ人もいる中で、隣から啜り泣く声が聞こえる。

「……謙也君、大丈夫?」

薄暗い中でもわかるくらい瞳を潤ませている彼に、ハンカチを差し出すと、すまんと涙ぐんだ声でお礼を言われた。

そうこうしている間に、スクリーンの映像が消えて、ホールに灯りがついた。

「……出れる?」

その問いには、力なく首が振られる。

「……すまんなずな、」

項垂れる謙也君を暫く見守っていると、大きな溜息の後聞こえた、弱々しい声。

「女々しい男で、みっともないやろ」
「そんなことないっ!」

自嘲気味に笑う謙也君に、思わず大きな声で返していた。

目を丸くした謙也君を見て、咄嗟に口元を手で抑える。

「……そんなことないよ」

ちょっと深呼吸してから、改めて謙也君の目を見つめて言い直す。

「むしろ逆に謙也君のこと、もっと好きになったかも」

謙也君がそれだけ優しいってわかったから。

頬が熱くなるのを感じながらも、思ったままを述べると、謙也君の顔も一瞬で朱に染まる。

「……おおきに、なずな」


俺も好きやで。

2人きりのホールで、そっと抱きしめられた耳元に、そう囁かれた。



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