「っぐ……、ぇぐ……」
「…………」

話題を集めた映画を観終わり、エントランスに向かってあるく俺の背中側から聞こえる嗚咽。

素知らぬふりをしとっても、しゃくりあげる日和が、文字通り俺の後ろをぴったりと着いてくるもんやから、2人揃って、周囲の視線を独占しとった。

視線の多くは、俺に向けられたもんで、大概が非難がましい。
大方、俺が日和を泣かせたとでも思われとるんやろう。

……せやから、感動系をこいつと観るんは嫌やったんや。

「……ええ加減泣き止めや」
「ウチがでっ、……泣ぎやみたいげどっ、とまらへんもんっ……!」

肩越しに目を遣れば、時折呼吸を引き攣らせながら反論する日和。

……ホンマ、ガキの泣き方や。

「……しゃーないやつ。ちょっとそこで待っとれ」

小さく嘆息をついて、日和をロビーの椅子に座らせ、手近にあった手洗い場で、持っとったハンカチを濡らした。

「ほれ」
「うひゃっ、」

それを予告なしに日和の目元に押し当てると、冷たさに驚いたのか、奇声をあげる。

「落ち着くまで、当てとき」
「おん……。ひー君、おおきに」



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