「……えぇ話やったなぁ」
「う゛ん……」
映画のエンドロールが流れとる最中、隣のひなに話し掛ければ、涙ぐんだ声が返ってくる。
ハンカチを当てとる彼女の目元は、暗がりでもわかるくらい赤い。
「……うさぎさんになっとるで」
「うぅ、みないで……」
「やだ」
顔を背けようとする彼女の頬を両手で挟んで固定する。
「泣いとるひなもかわええもん」
「……蔵のいじわる」
先程までとは違う意味で、彼女の顔が朱を深める。
「せやけど、」
まだ水を溜めとる瞳に親指をあて、それを拭ってやると同時に、ホールの灯りがついた。
「俺以外のやつに見られるんは許せんな」
もう片方の瞳に唇を当てて、ひなの耳元で囁けば、小さく照れたような声で、馬鹿、とだけ返された。
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