「んー、美味しいっ」

今日は蔵と買物デート。
休憩に立ち寄ったフルーツパーラーで、七夕に因んだスイーツを口にしている。

「こっちのメロンのも美味いで」
「そうなの?じゃあ、一口貰ってもいい?」
「ええよ。はい、あーん」
「え、あ、恥ずかしいよ……」
「誰も見てへんって。ほら、あーん」

柔らかな笑みを浮かべているけど、こういう時の蔵は、絶対に引いてくれない。

「〜〜〜、あーん」

仕方ないので、彼に従って口を開けると、ひんやりとしたゼリーの感触。

「美味い?」
「うん」

どこか嬉しそうな表情をした蔵に頷くと、彼は満足げに笑みを深める。

「ほな、ひなのもちょーだい」

口を開けて、そこを指差す。

私にも食べさせろってことね……。

「もう、しょうがないなぁ……」

真っ赤になりながら、桃のゼリーを掬って、蔵の口に入れる。

「美味しい?」
「おん……って、ひな、顔赤っ」
「蔵が恥ずかしいことさせるからだよっ」
「すまんすまん。せやけどたまにはええやろ」
「まぁ、ね」

楽しげに笑う蔵に、口を尖らせながら答えると、小さな子をあやすみたいに頭を撫でられる。

「なんか今日は甘えたなんだね、蔵」
「そか?」
「うん」

さっきのあーんもそうだけど、買物中もやたらとスキンシップを求めてきたり。

「あー……、」

どうしたのかと疑問をぶつけると、蔵は気恥ずかしそうに頭を掻いた。

「今週、ひなと一緒の授業に限って休講になったり、俺の科の実験が延長して帰れんくなったりで、逢えん日が続いたやん」
「うん」
「せやから、ずっとひなが恋しくて」

ストレートな表現に再び顔が火照る。
けれど、同時に嬉しくもあった。
だって。

私も蔵に逢いたくて仕方なかったから。

素直にそういうと、蔵はテーブルに身を乗り出して私をぎゅっと抱きしめた。



(あー、俺絶対彦星にはなれんわ……)
(?)
(1年に1度しかひなに逢えんとか耐えられへんもん)



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