大学生になって初めてのGW。
去年の秋から付き合いはじめた謙也君と予定を合わせて、遊園地に遊びに来ていた。

「なずな、早よ早よ」

嬉々として手招く謙也君は、幼い子供みたいで微笑ましい。

「急がな乗れんくなってしまうで」
「うんっ」

差し出された手をとって、この遊園地のメインであるジェットコースターに向かう。

「待ち時間60分かぁ」

開園と同時くらいに入ったのに、既にこの時間とは。

「さすがウリというかなんというか……」
「どないする?」
「乗るならこのまま並んどいたほうがいいんじゃないかな」
「せやな」

溜息まじりの謙也君は、がっくしと肩を落とす。

「待ち時間、苦手だもんね」

それは謙也君と付き合ってから気付いたこと。
何度か電車やバスを使って出掛けたことがあるけれど、10分くらいのロスタイムが生じると、少しだけど機嫌が悪くなる。

「や、でもなずなと一緒なら大丈夫や。こーして話しとるだけで楽しいし」

照れたように笑う謙也君。

「ちゅうかなずなこそ、ジェットコースター平気なん?」
「日本一とか世界一、みたいなのは嫌だけど、こういうのなら大丈夫、な、はず」
「ホンマにか?」

心配そうに私を覗き込む謙也君。

「ちょっと怖いけど、謙也君が一緒なら大丈夫かなって」

謙也君は僅かに目を瞠って、頬に朱を走らせる。
くしゃりと頭を撫でてくれた手に、心がほっこりする。



***



そんな風に他愛のない話をしてるうちに、あっという間に順番が回ってきた。

「なずな、ホンマにええか?」
「う、うん」

がしゃんと安全バーが降ろされる。

「怖かったらこうしとろ」

そっと重ねてくれた謙也君の手をぎゅっと握ると同時に、がたんと音がして、ジェットコースターが動き出す。

カタカタカタ。

ゆっくりと上へと登っていく。
カタカタカタ、カタ。

ほんの一瞬だけ景色が制止した。
そして、それ以降の記憶は一切ない。



***



「……なずな、大丈夫か?」
「うん……」

気がついたら、ベンチの上だった。
目覚めた私に、飲み物を差し出して、謙也君が眉を下げる。

「無理に付き合わせてしもてごめんな」
「ううん、大丈夫だって言ったの私だし」

謙也君は隣に座ると、そっと抱き寄せて肩を貸してくれる。

「暫く休みや」
「ありがとう……」

その言葉に甘えて、謙也君に体重を預ける。
そろそろと髪を梳く手の優しさが、安心できる。

「調子良くなったら、今度はなずなの好きなもん乗ろな」
「……メリーゴーランドとかになっちゃうよ?」
「ええよ。なずなとのデートやもん、2人で楽しめることしよ」
「うん。……謙也君ありがと」

……大好き。

微かな音はばっちり謙也君の耳に届いてたらしく、横顔がほんのりと紅くなっていた。



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