私の風邪が完治してから数日後。
今度は蔵が風邪を引いてしまった。

「うぅー、頭痛い……」
「ほら、ちゃんと横になって。布団も肩まで被って」

青いパジャマを着た蔵は、白い肌を赤くしてて、かなりの熱がありそう。

「そういえば、蔵のご家族は?」
「友香里は塾、ねーちゃんとオカンは買物、オトンは仕事でみんな夕方まで帰って来ぃひん」
「そっか……」

こんな状態の蔵を独りきりにさせるのは忍びない。

「じゃあこの間の約束。今日は私がお粥作ってあげるね」

以前看病して貰ったお礼代わりに申し出ると、蔵はふにゃりと微笑んだ。



***



「お待たせー。食べられそう?」
「おん……」

蔵の背を支えて上体を起こしてあげる。

「なぁひな」
「ん?」
「ふぅふぅして?」

……はい?

「熱いと食えへんねん……」

あかん?と首を傾げる蔵はまるで小さな子供みたい。

「しょうがないなぁ」

その可愛さにほだされて、彼の望み通り、お粥を蓮華で掬って息で冷ましてあげる。

「ついでにあーんして?」
「はいはい」

ふにゃふにゃした笑顔を向ける蔵に呆れながらもついつい言うことをきいてしまうのは、普段は甘やかしてくれるばかりの蔵が甘えてくれるのが嬉しいから。

「おおきに。ひなのお粥、めっちゃ美味い」

いつもとは逆に、実年齢よりも幼くみえる蔵の笑顔を見つめながら、たまにはこういう蔵もいいな、なんて思ってしまったのは、ここだけの話。



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