「明けましておめでとう」
「おん。おめでとさん、ひな」

元旦の昼前。
夜中の人混みはどこへやら、閑散とした境内で蔵と待ち合わせて、本殿に向かい。

チャリーン。

2人でお賽銭を放り込んで、願いをかける。


「随分長い願い事やったな」

しきたり通り、二礼二拍手一礼して顔を上げると、さらっと願い事を終えていたらしい蔵に苦笑された。

「何を願ったん?」
「お姉ちゃんや、離れて暮らしてる家族みんなと、部活メンバーの無病息災でしょ、それから光君率いる四天宝寺の全国優勝」

そして。

「蔵と同じ大学に行けますようにって」

指を折りながら枚挙すれば、苦笑の度合いを深める蔵。

「自分んこと後回しにする辺りがひならしいな。せやけど、ええの?そないに沢山願掛けしたら、最後のお願い、神さんに忘れられてしまうかもしれんで?」
「それは大丈夫。だって蔵も同じことお願いしたでしょ?」

したり顔で問うと、驚いたように目を見開く蔵。

「それに、神様に頼らなくてもいいくらい勉強するから」

ガッツポーズで宣言すれば、「さすがひなやな」と頭を撫でてくれる。

「せやけど、頑張りすぎは身体に毒やで?苦しなったら、いつでも俺を頼りや」

蔵の優しさに満ちた言葉に、あと数ヶ月続く受験シーズンも、ちゃんと乗り切れそうな気がした。



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