「ひ・い・君」
「……何や」

放課後の図書室。
カウンターでぼーっとしとったら日和がやけにニコニコしながらやって来た。

「今日が何の日か知っとる?」

問われてカウンター上のカレンダーに目を向ければ、今日は11月11日。

「あぁ……。某菓子メーカーの陰謀の日やろ」
「そこは素直にポッキー&プリッツの日て答えてや!」

捻くれた答えを返せばすかさずつっこんでくる日和。

「因みにひー君はポッキー派?プリッツ派?」
「プリッツやな」

即答すると、日和はがっくしと盛大に肩を落とした。

「何やねん、急に」
「やってプリッツやったらゲームにできひんやん」
「は?」

日和曰く、俺は甘党やから絶対ポッキー派やと踏んでいて。
予想通りの答えが返ってきたら、ポッキーゲームに持ち込むんやったのに、とのこと。

残念やけど、俺はあんこの甘味が好きなだけで甘党やない。

「それに、別にプリッツでもできんくはないで、ポッキーゲーム」

但し口ん中が塩辛くなるんは必至やけど。

「ほんまに?」

途端に息を吹き返して瞳を輝かせる日和。

「ちゅうか自分、ポッキーゲームがどんなもんかちゃんとわかっとるんやろな?」

コイツはたまに世間知らずなトコあるからな。
不安になって訊ねてみると、案の定日和はぽかんとしとる。

「知らんのにやりたかったんか」
「やってゲームいうくらいやからおもろいんやろなって思て」

あかん。
これはほんまに理解しとらん。

「……しゃーないな」

幼なじみのよしみで常識を教えたるか。

図書室自体は飲食禁止やから日和を連れて司書室へ移動してから、日和が後ろ手に隠しとったプリッツを奪って箱を開ける。

「ほれ、こっち咥えや」

取り出した中身の端を日和にくわえさせて、反対側からゆっくりと食べ進める。

「!?」

プリッツを伝って日和が息を呑んだんがわかる。

パキポキ。

だんだんとゼロに近づく2人の間。

ポキパキ、

ボキンっ!

一際大きな音を立ててプリッツが折れる。
勿論折ったんは俺やない。

「折ったら負けやで?」
「や、やけどっ!」

顔を真っ赤にする日和に思わず吹き出す。

「わ、笑わんといて!」
「悪い悪い。せやけどこれでわかったろ、ポッキーゲーム」

もっかいやるか?

「え、遠慮しときます……」

わざと意地悪く訊いたれば日和とは思えんくらいに萎れた声が返された。



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