世の中っちゅうもんは、どこまでいってもプラマイゼロになるようにできとるんやなってつくづく思う。

常に脚光を浴びて人々の中心におれるモンがおったら、その逆、常に人の輪から爪弾きにされるモンも必ずおる。

性格が真っ直ぐでイイ奴がおれば、捻くれモンもおる。

他人が羨む容姿をした人がおるなら、その逆も然り。

フツーやったらひとりの人間の中でもそういう損得はゼロになるはずやが、ウチは何につけても常に後者。

そんな自分が嫌いで嫌いで堪らんくて。
しかも当の本人さえ好きになれへんのやから、他人が好むはずもあらへん。

何かにつけては理不尽な嫌がらせを受けてきた。

『は、何やねん』
『ふざけんなや』

理不尽さから身を守るため、強くあろうとした。
乱暴な言葉遣いもその一環。

せやけど何しても嫌われモンは嫌われモンのままや。

ウチの努力さえもからかいや嫌がらせのネタにしかならんかった。



「ウチは死んだほうがええのかもしれんな」

今日も今日とて、何が気に喰わんのか、やたら絡んで来よる女子の集団に女子トイレに引きずり込まれて水をぶっかけられた。
体操服も持ってへんかったから、濡れ鼠のまま帰ろうとしたところを隣の高校に通う4つ年上の幼馴染に見つかって、ヤツが住家(?)にしとるらしい保健室に連行された。

びしょ濡れになった理由を適当にごまかそうとしても、ヤツはウチの嘘をあっさりと見抜きよって。
「何でや」としつこく問われるのが鬱陶しくて、とうとう本当のことを話してしまった。
我ながら情けなくて、最後に自嘲気味にそう呟いたら、ヤツは切れ長の瞳を更に細めた。

「な、何やねん」

――パシンっ!

怒気を孕んだ瞳に怯んだ隙に、頬を叩かれる。
せやけど、神経が痛みを脳に伝える前に、ウチは温もりに包まれた。

「…………アホなこと吐かすなや」

耳元で押し殺したような声。
きつく抱きしめられた腕の中で視線を横に向けると、悲しげな顔。

なしてアンタがそないな顔すんねん。

予想外の展開に頭がこんがらがる。
それをどうにか処理しようとしてるんに、ヤツは更に予想外なことを宣った。

「俺はなまえが好きや。例えなまえ自身が好きやなくても、俺はお前が好きやねん」

それは誰にも……、自分でさえも自身に与えられんかった言葉。

「……おおきに。せやけど同情はいらんで、蔵」


好きと言って貰えるんは嬉しい。
せやけど本心やないその言葉は、結局後で悲しみに変わるだけ。

彼をそっと突き放し見上げると、再びアホと言われた。

「こんなこと、同情だけで言える訳ないやろ……」

みるみるうちに色白な頬が色づいていく。

嘘やろ。
あの蔵が。
人気モンの蔵が、嫌われモンのウチを?

「ウチ、かなりの捻くれモンやで?」
「おん」
「がさつやし、協調性あらへんし」

自分で言うのもなんやが、ウチほんまええとこひとつもないな。
言うてて惨めになってくる。

だんだん俯いてったウチの頭をそっと蔵がそっとあげさせた。

「どんな自分でも、オレは好きやで」

ちょっと強がりなその性格も。
おおらかなとこも、潔いとこも。

「それ以外にも、実は家事全般得意なこととか、なまえのええとこ、沢山知っとるし」

にこっと笑う蔵に、心がとくんと跳ねる。

「もっぺん言うけど、俺はなまえが好きや。俺と付き合うてくれませんか?」

真剣な蔵の眼差しに、ウチは無意識に首を縦に振っとった。



魔法のコトバ
キミの好きが
頑なな心を融かしてく



(ありがとう。蔵に好きでいて貰えるウチなら、ウチも好きになれるかもしれん)
(ほうか)
((それ以上に蔵のことも更に好きになりそうやけど、ね))




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白石に言われたい台詞「どんな自分でもオレは好きやで」でした。
リクエスト下さった蘇芳様、ありがとうございました!

ご要望が先輩幼馴染白石×男っぽいヒロインでしたが…、このヒロインあんまし男っぽくないですね(^^;)
どちらかというと理論的…orz
すみません><

それから蛇足ですが、白石に保健室へ連行されたなまえさんが濡れたもののかわりに着せられたのは白石のジャージだという設定があったりします。


それではこの度は本当に素敵な台詞ありがとうございました!
少しでも楽しんで頂けることを祈って。


羽澄 拝


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