「あぢー」
「口じゃなくて、手を動かしなさい」
「無理だ海に行きてぇー!」
「それは宿題が済んでから」

綱海の部屋、向かい合って座っている部屋の主が両手を挙げて寝転んだ。夏休みも終わりが近づき、宿題に追われる綱海を手伝いに来たはいいものの、クーラーが壊れているらしい綱海の部屋はサウナ状態。図書館だと喋れないから勉強を教えられないし、仕方なく汗をだらだら垂らしながら宿題をしていたのだけど、綱海が先に音をあげた。

「だってわかんねーもん!」
「だから教えてあげてんの」
「暑くて頭に入んねー」
「もう!」

呆れた。わたしはため息をついて立ち上がる。

「ちょ、帰るのか?!待てって、ちゃんとやるから!」
「何焦ってんの。冷たい飲み物買ってくるだけ」
「んじゃ俺も一緒に…」
「戻ってくるまでにこれ一枚終わらせること」

立ち上がりかけた綱海の目の前のプリントを指して、にっこり。綱海はショボンと座り直した。

「何がいい?」
「コーラ」
「おっけー」

綱海の頭をぐしゃぐしゃ撫でてやると、綱海は照れ臭そうにずれたゴーグルを直した。頑張れ綱海。わたしは涼しいコンビニに行ってくるからね。




綱海のコーラと自分のカルピスを買って、ちょっとアイスを物色して雑誌を立ち読みして。プリント一枚くらいそろそろ終わったかな、という頃にコンビニを出た。生暖かい空気にノロノロと足を動かし、綱海の家に向かう。綱海のおばさんに挨拶して、サウナ…違った、綱海の部屋に上がった。綱海は扇風機の前で漫画を読んでいた。

「つーなーみー…」
「おっ!おかえり!」
「おかえり!ってねぇ!」
「怒んなよ!お前が遅いから、プリントも終わったし、こっちのテキストも終わらせたんだぜ!」
「あら」

確かにプリントもテキストも終わっているし、ざっと見たところ大きな間違いはないようだった。

「すごい、綱海」
「だろ!」
「じゃあ海でもどこでも、」

言いかけて、綱海に腕を引っ張られ、腕の中に倒れ込んだ。持っていたコンビニの袋が床に落ちる。

「お前の腕まだ冷たいな。コンビニ、クーラー効いてただろ」
「ちょ、綱海、暑い」
「暑さでちょっと頭やられてんだ」

そのままばたんと押し倒された。熱中症になったらどうしようと考えながらも、されるがままなのは、惚れた弱みってとこだろうか。

綱海くんと
なつやすみ
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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