「俺は死ぬかもしれねぇ…」
「馬鹿だなぁ、死ぬわけないじゃん。大袈裟だよ」
「けどよ!俺こんなに寒ぃの生まれて始めてだぜ?」
「そりゃ綱海、雪見るのだって始めてでしょ。そうじゃなくても北海道なんだから寒いに決まってるって」
「南国育ちには厳しい寒さだぜ…」

わたし達は今、吹雪くんに招待されて、北海道に来ている。誰よりも着込んでいる綱海は、しかし誰よりも寒そうにしていた。褐色の肌が場違いである。沖縄出身なのはわたしも綱海も変わらないけど、わたしは新潟に親戚がいて、お正月に行ったりするので、雪には慣れている。でもやっぱりクリスマスに雪というのは特別な感じがする。綱海は、到着してすぐは雪に興奮していたけど、だんだんと寒さでテンションが下がっていき、夕方の今はもう随分まいっているようだ。

「あ、綱海見て、おっきいツリー!」
「おー、綺麗だな」
「感想が棒読み」
「仕方ねぇだろ、さみーんだよ」

ツリーの周りには、待ち合わせをしているらしい人や、楽しそうなカップルや、制服の女の子達などがいて、みんなクリスマス気分を楽しんでいた。綱海は顔を半分マフラーに埋めて、いかにも寒そうにしている。綱海じゃないみたいで、ちょっと可愛い。

「しょうがないなー、わたしのカイロあげる」
「おー…助かる」

わたしがカイロを渡そうとすると、綱海はわたしの手ごとぎゅっと握った。

「あったけー」
「わたしの方があったかいんだけど」

綱海の手はほんとに冷たかった。それがなんだか悲しくて、わたしは綱海の手の上から、さらに握った。綱海はやっと、笑ってくれた。

「寒いのも悪くねぇかもな」

そう言って、ツリーの方を見る。かなり背の高いそのツリーは、午後五時からライトアップされていて、キラキラしている。

「綱海、綱海」
「あ?」
「メリークリスマス!」

わたしは、綱海の手があったかくなってきたところで、握っていた手を開いて、ポケットに突っ込んだ。取り出したのは、雪だるまのストラップと、クッキー。さっき雑貨屋さんでこっそり買ったやつと、作って持ってきたやつだ。綱海は嬉しそうに、それを受け取ってくれた。

「サンキュー、大事にするな」
「うん!」
「じゃあ俺からも、メリークリスマス」

いきなりマフラーを引っ張られて、ちゅっとキスされた。突然のことで、ぽかんとしている間に、綱海の顔が離れる。

「ポケット」
「え?…あ」

わたしのポケットには、わたしが綱海にあげたのと同じストラップと、可愛い指輪が入っていた。

「同じの選ぶとか、ウケるよな」
「そうだね、でも嬉しいな。それに、指輪も」
「入るかはめてみろよ」

そう言われて、指輪をはめてみると、見事にぴったり。

「計ったみたいにぴったり!」
「まあ、調べたからな」
「なんだぁ」
「左の薬指に合わせたんだぜ」
「…ありがとう」

左手をちょっと上にあげて、眺める。ツリーの光が映って、キラキラ光っている指輪は、多分世界一きれいな指輪だ。



冬の吐息



091225
メリークリスマス!

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