「あ、それ」

学園に着いて、兵太夫くんからリボンを受け取り、ハチと兵助の部屋に帰ると。おかえりのすぐ後に、そんな言葉が飛んできた。

「前の紐だ」
「タソガレドキの忍組頭に会ったのか?」
「にゃあ〜」

事情を話すと、二人になまえは鈍臭いなぁと笑われた。

「でも、俺でも助けたよ」
「にゃ?」
「いや…なまえがあの人のこと格好いいとか言うからさ」

言ったくせに、なんか照れている兵助。兵助はいつも格好いいよと悪戯っぽく言ったら、そういうことじゃなくて!と怒られた。と、黙っていたハチが、おもむろにわたしの首に手を伸ばした。

「なあ、なまえ。ちょっと両方の紐貸してみな」

するりと解かれた首のリボン。わたしは大人しく、咥えてきた方も差し出した。ハチは不器用な手付きで、その二本を編もうとしてくれているみたいで。確かに二本するのは可笑しいから、編んでもらったら付けやすい。

「うーん、結構難しいな」
「はっちゃん、不器用だな。貸して」

兵助がそんなハチを笑って、編み途中の紐を受け取り、慣れた手付きで続きを編んだ。確かにハチのちょっとごつくて大きな手は、細い紐を扱うよりも、毒虫や動物を扱うのに向いているな。兵助の手は大きいけど指が細くて、細かい作業は向いているみたい。結局、ハチがやったとこは編目がぐちゃぐちゃだけど、兵助のとこは等間隔になった。その不格好さが、すごく愛しく感じた。

「上手いもんだな、兵助」
「細かい作業嫌いじゃないから。さあなまえ、できたよ」

わたしが兵助の膝に両前足をのせて首をのばすと、兵助はわたしの首にリボンを結んでくれた。これは今や、世界に一つだけの、不格好に編まれたリボンになった。

「にゃあ」
「ありがとって、そんな改めて言われるとなんか照れるよ」

兵助はそう言うけど、なんだか嬉しくって、ありがとうって言いたくなったのだ。久しぶりに、なんだか幸せ気分。


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -