留三郎先輩と食堂に着くと、気付いた小平太先輩が大きく手を振った。足元のわたしは見えてないみたいだ。

「こっち席あるぞー!」
「二人分あるか?」
「?、あるけど、伊作は当番だろ?」
「伊作じゃなくてさ」

留三郎先輩は混み合った食堂を、縫うように小平太先輩のとこまで向かった。その足を追うように、わたしもくねくねと食堂を進む。

「なまえが一緒なんだ」
「なまえー!」

すぐに持ち上げられ、小平太先輩に撫で回される。正面にいた仙蔵先輩も、一緒に食べるのは久しぶりだな、と微笑んでくれた。留三郎先輩は、黙々と食べ続けていた文次郎先輩に何か言ったらしく、またを喧嘩している。力任せな撫で方に、そろそろ首が疲れたかなあという頃、長次先輩が助け出してくれた。みんな一緒にご飯かあ、仲良いんだな。

「おや。なんだかなまえ、雰囲気が変わったか?」

長次先輩に椅子に下ろしてもらい、落ち着いたところで、小平太先輩が言った。言い合いをしていた留三郎先輩は、いつの間にかご飯を取りに行っていて、いない。

「そうか?」
「文次郎にわかるわけがない。変わったのは紐の色だ」
「あんだと?」
「では文次郎、元々なまえがしていた紐の色がわかるか?」
「ぐぅ…」
「ああ!本当だ!」

いつものやり取りを繰り広げる二人の横で、マイペース全開な小平太先輩。

「可愛いなあ、その色も似合っているよ、なまえ」
「にゃあん」

ありがとうございますと言えば、小平太先輩はにっこりと笑った。と、そこに留三郎先輩が戻って来た。わたしの前にわたし用のご飯を置いてくれたので、再びお礼を言う。席に着いて手を合わせた留三郎先輩に、小平太先輩が尋ねた。

「なあ。なまえの飾り紐って、留三郎達が買ったと言ってたよな?」
「おう。なんか今は、タソガレドキの忍組頭に持ってかれちまったらしいけど」
「へぇ、なまえなりの反抗心か何かかと思った」
「何へのだよ」
「留三郎と伊作」
「にゃあ」

いやいや、と思わず突っ込み。必要な教科書や筆、食べ物以外でわたしが物を貰うということは滅多にないので、あのリボンは嬉しかったのだ。五年生のみんながくれたこのリボンも大切だけれど、伊作先輩と留三郎先輩がくれたあのリボンも同じくらい大切だ。

「まあ、次来たら返すっつったらしいじゃねぇか」
「にゃん」

わたしはこくんと頷いた。しかし、次来たらって、また侵入される前提じゃない。大丈夫なのか。でも、リボンは帰して欲しい。そんなことを考えつつ、小平太先輩と留三郎先輩、仙蔵先輩と文次郎先輩の会話も聞きつつ食事を終える。気が付いた長次先輩が、自分のものと一緒にお盆をさげてくれた。帰ってきた先輩にお礼をして、のんびりしていると、会話にきりがついたらしい小平太先輩が伸びをした。

「んー、そろそろ昼休みも終わるか」
「そうだな」

仙蔵先輩も立ち上がり、お盆を返しに向かう。よし、午後こそは授業に出るぞ、と椅子を降り、六年生の先輩達に尻尾を振る。は組の塊は、大人数なのですぐに見付かった。

「にゃーお」
「ん?あ、なまえさんだ!」
「午前どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「にゃあ、にゃあ」

ちょっとはしょりつつも、午前のことを説明した。左門くんと三之助くんの方向音痴は有名らしく、みんな苦笑いしていた。

「そういえばなまえさん、午後はどうするんですか?」
「にゃ?」
「今日は午後は委員会ですよ」

えー!知らなかった。

「一緒に行きますか?」

聞いてきてくれたのは乱太郎くんだが、彼はあの保健委員会だ。神妙な顔で首を振ると、ですよねと乱太郎くんが笑った。何かを諦めている表情だった。

「作法は?前に一回来ましたし!」
「生物委員に行きませんか?竹谷先輩もいますよ!」
「なまえさぁん、用具委員会に一緒に行きましょうよ〜」
「体育委員は?なまえさん、七松先輩とも仲良しですよね!」
「なまえさん、図書委員会はどうっすか?」
「火薬委員会もありますよ!」

みんながじょろじょろ集まってくる。わたしは悩んだ。忍術学園の委員会は結構ハードそうだしなあ。この間ゆるめだったから、また作法がいいかなあ。

「にゃーお?」
「え?一番楽な委員会はどれって?」

みんな目を逸らした。え、何、そんなに厳しいの?兵太夫くんまで。しかしそんな中、あのぅと庄左ヱ門くんが名乗りをあげた。

「委員会の集まりなら、僕の学級委員長委員会が一番楽…かもしれません」
「あー確かに、普段は庄ちゃんくらいしかまとめられないような大変な委員だけど、委員会の集まりは気楽そうだよね」
「にゃあ!」
「じゃあ決まり、行きましょうか」

わたしは、他のは組の子に別れを告げて、庄左ヱ門くんと一緒に学級委員長委員会に向かった。



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