作兵衛くんと一緒に、学園長にくせ者の話をしに行った。くせ者はどうやら、学園長を狙って何度も学園に忍び込んでいる、フウマの忍者らしい。フウマが何かよくわからなかったけど、心配はないと学園長は笑った。やっぱり学園長は、ただの忍者ではないのだ。それからすぐに実技の先生を呼び、くせ者を監視するよう言うと、作兵衛くんとわたしにお礼を言ってくれた。わたし達も挨拶をしてから、部屋を出る。

「はあ、あいつら探さなきゃ」
「…にゃん?」
「ああ、そうなんです。あいつらすぐいなくなるから、縄で繋いでたんですけど、気付いたら切れてるんですよね」

ずっと片手に持っていた、切れた縄を見て、ため息をつく作兵衛くん。

「まずは食堂の方を探しましょう。あいつら、目的忘れて飯食ってることたまにあるから」
「にゃあ」

二人並んで歩き、食堂に向かう。授業はそろそろ中盤の時間だ。作兵衛くん達の授業はどうしたのかと聞くと、先生の急用で自習になり、外で特訓しよう!と意気込んだ左門くんと三之助くんが教室を飛び出し、慌てて縄を繋いでいる間にくせ者を発見して、そのまま二人が縄を引きちぎりどこかへ行ってしまったという。そんな話をしている間に、食堂に到着する。

「いないかー」
「あら作兵衛くん、なまえちゃん」
「おばちゃん、左門と三之助来てないですか?」
「来てないわねぇ」
「ありがとうございまーす」

残念ながら、情報はなかった。次は三年生の教室に行ってみましょう、と作兵衛くん。慣れてるな。




作兵衛くん達のろ組の教室には二人はおらず、教科の授業中のい組もこっそり覗いたけどもちろんいない。今は空っぽのは組の教室にもいないので、今度は実技の授業中のグラウンドを見に行った。しかし途中で、三年生の集団に出くわす。

「あれ、作兵衛?」
「と、なまえさん」

この前作法委員で会った藤内くんと、ピンクの髪の男の子。

「数馬、藤内。授業終わったのか?」
「うん、ちょっと早めに。ろ組は自習だっけ?」
「ああ。ところで、左門と三之助見てないか?」
「見てないな」

やっぱりかーと残念そうな作兵衛くん。候補が減ってきたからだろう。それを察したピンクの子、数馬くんが、案を出した。

「僕、今から保健室で当番なんだ。保健室に行ってみない?」
「…そうだな」

ああ、作兵衛くん。頑張れ作兵衛くん。わたし達三人と一匹は、諦め半分で保健室に向かった。しかし、保健室の戸を開けると、正座した左門くんと三之助くんがいたのだ。

「あ、作兵衛!」
「ああー!」

作兵衛くんが叫んだ後、力尽きて座り込んだ。苦笑いの数馬くんが、その肩にぽんと手を置く。二人の前に座っていた新野先生が、作兵衛くんにお茶を出した。

「走り回っていたら保健室を見つけたみたいで。なまえちゃんの引っかき傷を治療して、そのまま捕まえておきましたよ。数馬くんに伝言を頼もうかと思ったら、調度作兵衛くんまで来てくれましたね」
「ありがとうございました、新野先生」

作兵衛くんはお茶を飲んで落ち着いたようだ。二人と走り回って、わたしも作兵衛くんの苦労がよくわかった。みんなでお茶をもらってまったりしていると、授業終了の鐘が鳴った。

「ほらみんな、お昼を食べていらっしゃい」
「はーい!」
「こら!左門と三之助止まれ!」
「僕は残るよ」
「にゃん?」
「当番なんです。多分、善法寺先輩がおにぎりを持って来てくれますから」

伊作先輩が?嫌な予感しかしないけど、お腹が空いたので、わたしは心の中で数馬くんご愁傷様と考えつつも、みんなと食堂に向かうことにした。途中、おにぎりを運んでいる留三郎先輩と伊作先輩に会った。数馬くんの為にも、留三郎先輩が一緒なのだろう。これなら安心だ。

「お、なまえじゃないか」
「にゃーん」
「伊作とおにぎりを保健室まで届けたら、もっかい食堂に戻るんだ。一緒に来いよ」
「留さん、寂しいからって」
「うるせーな、お前のせいだろ」
「申し訳ない」

六年生には逆らえないらしい三年生のみんなは、わたしに手を振って一足先に食堂に向かった。まあ、留三郎先輩はちょっと見た目とか口調とか怖い感じだしなあ。わたしは伊作先輩と留三郎先輩の後ろを歩きながら、そんなことを考えた。


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